『
ザ・ヴァンパイア 残酷な牙を持つ少女』
子供と動物と共演するなという言い伝えはなるほど合点がゆく。(笑)
ニャンコ先生の魅力にはヴァンパイアといえども中々勝てそうにない。
言ってみればヴァンパイアの<ボーイ・ミーツ・ガール>もの。
ビジュアル優先かと思えるほどシャープなモノクロ映像がアート的魅力を放つ。
インディペンデント系のフェスティバルで評価を受けたというのは分かる気がする。
しかし、ジャンルよりもアナ・リリ・アミリプール監督がイラン系アメリカ人(生まれは英国)という家系の方に目が行く。
イランといえば『友だちのうちはどこ?』のアッバス・キアロスタミや『ペルシャ猫を誰も知らない』のバフマン・ゴバディ、さらには米アカデミー賞外国語部門受賞『別離』などメタファーに満ちた作風や国民性を反映した優れた映画が多く見られた。
そこへ行くとサブカル的な青春映画を思わせるのは珍しく思える。
それでもイラン系の作家が何の隠喩も持たないとは思えない。
西部劇を思わせるような殺風景の中、死人がゴロゴロしていても誰も気にかけないイランのどこかにある<バッド・シティ>が舞台。
ボーダーのシャツを着て、スケートボードを楽しむさまは自由の国アメリカを意識してのことではないのか。
ベールをかぶる少女の部屋には欧米への憧れが素直に反映されている。
オマケにヴァンパイアは夜しか生きられない。
どれほど光や自由を望んでも闇の中を生きるしかない…。
これこそがイランの人々の隠喩以外のなんであろうか。
セリフが極端に抑制されているのも<発言の自由>を奪われていることにつながっているのではないか…と。
それゆえバックに流れる曲の歌詞が気持ちを代弁しているように思えたので、当該箇所に字幕がないのは大きなハンデじゃないかと感じた。(hold on me…とかね。)
こんな死の匂いしかしない街でも少年少女たちはたくましく生きていく。
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