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2015年08月26日01:09

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新譜之雑談帖(その220)―ニューイヤー・コンサート・コンプリート・ワークス(23CD)

CDのセットのタイトルを見ても、一体何の事か良く解らず、何をどうやってCD23枚分もの録音を、それも他社レーベルの録音迄ライセンス料を支払って、と思いきや。

今年で開催される様になってから75年目になるのを記念して、これ迄ウィーン・フィルのニューイヤー・コンサートで取り上げられた全曲目を、実際のニューイヤー・コンサートの録音で集大成しよう、というもの。演奏された事はあっても、実況録音が残っていない曲目については、最後のCDで室内アンサンブル版の新録音を行って、補完しているとの事。クレメンス・クラウスの実況録音も幾つか収録されている一方、1946年・47年にニューイヤー・コンサートを振った、ヨーゼフ・クリップスの演奏は、録音が残っていないとかで(嗚呼、何と云う)収録されていないのだそうでして。

まあこの時期は、当時の有名所の指揮者は、フルトヴェングラーを嚆矢として軒並みナチスの協力者の嫌疑を受けて、連合軍から演奏活動が停止されていた頃でもありまして。善意に解釈すれば、録音機材の手配どころではなかっただろう、と云う気もしますが。意地悪く解釈すれば、使える指揮者がクリップスしかいなかったので、それこそ「世が世なら、クリップス風情に指揮なんぞされてたまるか」てな意識が、ウィーン・フィル側の底流にあって(ウィーン・フィルであったかどうか、記憶が定かではありませんが、クリップスはオーケストラの面々から嫌がらせを受けて泣いて仕舞った事もあったそうで。昔読んだ『ウィーン・フィルえぴそーど』と云う本では、サーバタも度々ウィーン・フィルから色々意趣返しをされたとの事)、物資不足を理由に敢えて録音を残さなかったのかも知れませんが、それはまあさておき。

ニューイヤー・コンサートに、色々な指揮者が登場する様になったのは、歴史的に見ると比較的最近の事。クレメンス・クラウス>ウィリー・ボスコフスキー>ロリン・マゼールと来て、マゼールがウィーン国立歌劇場のポストを辞任して、ニューイヤー・コンサートの指揮も放り出して以来の事(の筈)。と云う訳で、この録音集成には、クラウスは兎も角、ウィンナ・ワルツの演奏では定評のあったエーリッヒ・親父クライバーを始めとして、クナッパーツブッシュ、シューリヒト、ベームと云った、ウィーンのオーケストラとのウィンナ・ワルツの録音を、ある程度まとまって残した指揮者の録音は含まれていないのが残念な所。
また、録音がここ最近(1990年代以降)の物が大半であるのが、因循姑息なわたくしとしましてはちょっとなあ、と思う次第。収録曲数では、メータのももが一番多い、というのも(登場回数5回で54曲、次点のマゼールが登場回数10回にして50曲)ちといただけない所。

どうせなら、クレメンス・クラウスの録音、そしてウィリー・ボスコフスキーの録音(スタジオ録音は今でも容易に入手可能な様ですから、実況録音を)を何枚組かにして、出して頂きたかった所ですね。尤も両人は、生前はデッカとの録音が主体でしたから、デッカが何か企画を立てて、録音集成を拵えてくれるかも知れませんが……
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