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2015年08月21日01:19

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『野火』(2015年)

野火』(塚本版)

 大岡昇平の同名小説の再映画化。
原作も市川崑版映画も未読・未見だが、強い使命感は感じる。

 第二次世界大戦末期のフィリピン・レイテ島で敗色濃厚の中、補給もなく極限状態に置かれた日本兵のサバイバルを描く。
塚本晋也は私財を投じて完成にこぎつけたという渾身の一作。
市川版にはなかったという“猿の肉”の描写も塚本ならではか。
地獄絵図のスプラッター表現がこの監督らしい。

 戦地の<人肉問題>を通して、人間の尊厳と極限状況下での狂気を垣間見せる。
人が人らしくいられるのは、最低限の生活ができてこそ。
何事も直接体験に勝るものがないとはいえ、体験しなくてもいいことはある。
映画という作り物だが、戦争がいかに人をケダモノに変えるかを知っておくにはいい材料だろう。

 出てくる人物が汚れて真っ黒で、もはや人間の顔をしてない。
すでに人間ではなくなっていて、闇に飲み込まれているということなのだろうか。

 デジタルのぎらついた感触に最初は戸惑ったが、逆にグロテスクで生々しい描写にはうってつけだったのかもしれない。心底、映画に匂いがなくて良かったと思う。
余りのグロさに目をそむけたくなるが、これぞ戦争。

 マルチな才能を見せる塚本監督だが、今回は(自主映画だから余計に…かもしれないが)、制作・脚色・編集・撮影・主演まで務める。
カメラアングルや編集に作家性を強く感じた。
本来、こうしたものであるべきとは思うのだが…。
監督の顔が見えない大衆映画とは対極にある作品に思える。

 ただ、ラストがモヤモヤした印象を残して終わるのが少し残念。

フォト


う〜ん、市川崑版が見たくなる。あせあせ
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