『パージ：アナーキー』

『パージ：アナーキー』

　病んだアメリカ社会は『パージ法』という年に一度だけあらゆる犯罪が許される12時間を設けることになった…というのが前作『パージ』の設定だった。
前回はセキュリティ会社に勤める金持ちが頑丈にガード固めた邸宅メインだったが、今回はパージの夜を街中で暴れまわる連中の行動に主眼を置いている。

　貧乏人のガス抜き、貧乏人も一発逆転可能な一夜だが、リスクも高い。
運悪くパージに巻き込まれた黒人親子と白人カップルの行く末の不安、それとは異質な完全武装でやる気満々の男の謎に迫る。

　表向きはどんな綺麗ごとを言っても、アメリカ社会の実態はかつての奴隷時代と何ら変わりない支配層による格差社会で、その犠牲となる人々の悲劇がサスペンスタッチで描かれる。

　正直、前回の金持ちの受け身を見るよりは、こちらの方に共感できるしスリリングさも感じる。
お上がこの＜パージ法＞を誰の何のために制定したのか…というあたりの社会的皮肉も効いている。
ただ、一つ難点というべきか些細な疑問は＜クラス4＞の武器まで使用可能というがどのラインなのか説明があっても良かったか。（それとなく推測は出来るが…）

　病んだ負の世界の話にみえて、それでもどこかでアメリカの良心を信じているかのような筋書き。
そこに一筋の希望を感じさせるようであった。

　前作の『パージ』と本作は裏表のような関係なので、セットで見たらより楽しめるのではないだろうか。
（すでに3作目も用意されているという話だが…）
監督は1作目と同じジェームズ・デモナコがメガホンを取っているので統一感がある。