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2015年07月12日19:07

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第二部の完結

角川文庫の玉上版で、源氏物語の「柏木」から「鈴虫」までを読み、「夕霧」を飛ばして「御法(みのり)」と「幻」の帖を原文で読み終わった。

「御法」と「幻」は、源氏物語の中でも格別な二帖であることを認識した。
その味わいを再確認したく思い、今は、この二帖を小学館の日本古典文学全集版で、頭注と併せてじっくりと読み直している。

「御法」では、源氏の最愛の妻である「紫の上」の最期の日々が、美しく情感豊かに描かれている。そして、紫の上を喪って、自失する源氏の姿も描かれる。

この二帖を読むと、「幻」あるいは本文を欠いて題名だけが残る「雲隠」をもって「源氏物語」が終わったとしても、何の問題も無いように感じられる。光る源氏と彼をめぐる多くの女性たちによって綾なされた物語は、そのあるべきところで落着した。この壮大な物語にふさわしいラスト・シーンを紫式部は見事に描ききった。その重厚な余韻は、読む者に心があるならば、充分に感じ取られるはずのものである。

しかし、実際には、これは源氏物語の「第二部」の終末に過ぎない。
光る源氏の子孫たちによる「第三部」が、後に控えている。その内容を知る者にとっては、晩年の光る源氏の目の前で戯れる幼い「匂う宮」や「薫」の姿に複雑な思いを抱くかも知れない。
なぜ「第三部」が書かれたのか。これは、考えてみるべき問題だろう。
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