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2015年07月10日00:54

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『雪の轍』

雪の轍

 ゴダールの『さらば、愛の言葉よ』、ベネット・ミラーの『フォックスキャッチャー』、グザヴィエ・ドランの『Mommy/マミー』らを抑えて第67回カンヌ国際映画祭でパルム・ドールを受賞した作品。
し、しびれた!…尻が…。
きっと座席には“雪の轍”ならぬ“尻の轍”ができていたに違いない。(笑)
そう思いたくなる3時間16分。

 カンヌで2度もパルムドール受賞する巨匠ながら、これが本邦初公開となったトルコのヌリ・ビルゲ・ジェイラン監督。
チラシにもあるようにチェーホフをベースに、シェイクスピアの一節を引用し、シューベルトで仕上げられた世界がカッパドキアを舞台に繰り広げられる。全てが世界遺産級の映画。

 中心となる登場人物は元舞台俳優でホテルオーナーの中年男<アイドゥン>と若い美人妻<ニハル>、それに離婚して帰ってきたオーナーの妹<ネジラ>と少なめなのだが、ともかく濃密な会話劇にへとへとになる。
バストアップが多く、表情を追うようにカメラが切り替わる圧迫感から余計にそう思わせるのかも。
語られる内容が上から目線の教訓だったり、日ごろの不平不満だったり、揚げ足取りに終始する。

 アイドゥンは普段コラムなどを書いているようだが、立派な内容に反して行動は伴わない。
正直、共感できない人間ばかりなのだ。

 もっともそれこそ登場人物たちの精神を表しているのだろうし、普遍的な人の心のダークな部分を抉り出す。

 夫婦の言い争い場面は人によってはベルイマンを、また雪原の中の狂気は『シャイニング』を…という意見があるのは頷ける。
余計なものを足さずに、シンプルながら高度なものを作り上げている気はするが、この内容でこの尺は必要なのか?
終盤に、もうひとつ大きな展開が欲しかった。

 撮影がとても美しいのだが、思いのほかカッパドキアの外観が少なく室内場面が多かったのは残念。もっと観光映画でも良かった。
英題のWinter Sleepの方が納得できる部分はある。

フォト


 ツーリストの日本人客がちょっとしたスパイスになっていて楽しい。
体調を整えて、疲れない座席の劇場で!
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