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2015年05月24日01:55

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『愛して飲んで歌って』

愛して飲んで歌って

 名匠アラン・レネの遺作はなんともチャーミングな戯曲の映画化作品。

 余命いくばくもない教師ジョルジュを巡って、三組のワケありカップルが登場する。
それぞれに小さな問題を抱えながらも平平凡凡と生きている。
ある時、ジョルジュを励ますつもりでに素人劇団の舞台出演に誘ってから全員の人生が妙な方向に活性化し始める。(笑)

 戯曲原作の映画は数あれど、この舞台装置はかなり挑戦的だ。
基本的にセット内で劇は進むが、<いかにも…>と思わせるカーテンで建物を表現していたりする。(この美術には脱帽)

 季節の移ろいを話に織り込み、三組の男女の会話からジョルジュという人物像を浮かび上がらせるというスタイリッシュな作り。
英国の戯曲家アラン・エイクボーンの『お気楽な生活』を、そのまま英国舞台にしながらフランス語で演じる。フランスに置き換えても全く問題ないだろうに、このこだわり。(笑)

 キャストはレネ作品の常連俳優が大半なので、長回しにも安定感がある。
とりわけ三人の女の中でもサビーヌ・アゼマ(カトリーヌ)とカロリーヌ・シオル(タマラ)の息の合ったコミカルな芝居には思わず笑みがこぼれる。

 死期が近い者と交わることで生の喜びを得る効用も上々。
生きてはいてもどん詰まりだった三組のカップルの間に新しい風が吹き始める。
原題はAimer, boire et chanterと頭文字にABCが順序良く並ぶのは遊び心と見た。

フォト


 斬新な作品が遺作となったのは残念であるが、ジョルジュの役柄と奇妙な符合も感じてしまうのは神様のいたずらか。

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