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2015年04月27日22:13

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ペリーの予見

「実際的及び機械的技術に於て日本人は非常に巧緻を示してゐる。そして彼等の道具の粗末さ、機械に対する知識の不完全を考慮するとき、彼等の手工上の技術の完全なことはすばらしいもののやうである。日本の手工業者は世界に於ける如何なる手工業者にも劣らず練達であつて、人民の発明力をもつと自由に発達させるならば日本人は最も成功している工業国民に何時までも劣つてはゐないことだらう。他の国民の物質的進歩の成果を学ぶ彼等の好奇心、それを自らの使用にあてる敏速さによつて、これ等人民を他国民との交通から孤立せしめてゐる政府の排外政策の程度が少いならば、彼等は間もなく最も恵まれたる国々の水準まで達するだらう。日本人が一度文明世界の過去及び現在の技術を所有したならば、強力な競争者として、将来の機械工業の成功を目指す競争に加はるだらう。」

『ペルリ提督 日本遠征記(四)』岩波文庫・1955年 p.127〜128より
(漢字のみ現行の字体に改めている。)

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ペリーらの『日本遠征記』を読んでいて感じるのは、彼らの好奇心の強さと観察眼の鋭さだ。
好奇心の例としては、「函館」という地名の由来についての彼らの関心を先日の日記で取り上げた。
■函館という地名の由来-北帰行(18)
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1941365936&owner_id=2312860

ここでは、彼らの観察眼の鋭さについて取り上げてみたい。

今、我が国は「機械工業の成功を目指す競争」に加わっていると言える。
では、何時ごろから加わっているか。
「戦艦大和」や「ゼロ戦」を造った1940年代は、競争に加わった第一歩であったかも知れない。

戦後の高度成長期、我が国の自動車輸出が伸び、米国や欧州でも「日本車」が走るのが見られるようになった時代は、まさに「競争」に加わった時代だと言えるだろう。とすれば、ペリーは、そうした時代の到来を100年前に予見していたのだ。

では、ペリーが目で見ていたものは何か。
冒頭の文章に添えられている「挿画」は、「日本の桶屋」の風景である。

フォト


このような場面の観察から、100年後の「機械工業の成功を目指す競争」を想像するというのは、驚くべき卓見だと思う。
ペリーの時代の米国海軍将兵たちが、「文明の進歩」にとって大切なものは何かということについて、的確な洞察を持っていたことが分かる。

また、進歩を阻害するものとして、「人民を他国民との交通から孤立せしめてゐる政府の排外政策」を挙げていることも面白いと感じた。

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以下に冒頭に引用した邦訳に対応する原文を掲げる。

In the practical and mechanical arts, the Japanese show great dexterity ; and when the rudeness of their tools and their imperfect knowledge of machinery are considered, the perfection of their manual skill appears marvellous. Their handicraftsmen are as expert as any in the world, and, with a freer development of the inventive powers of the people, the Japanese would not remain long behind the most successful manufacturing nations. Their curiosity to learn the results of the material progress of other people, and their readiness in adapting them to their own uses, would soon, under a less exclusive policy of government, which isolates them from national communion, raise them to a level with the most favored countries. Once possessed of the acquisitions of the past and present of the civilized world, the Japanese would enter as powerful competitors in the race for mechanical success in the future.

原著p.455
https://archive.org/details/narrativeofexpe01perr
https://ia600607.us.archive.org/34/items/narrativeofexpe01perr/narrativeofexpe01perr.pdf
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