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2015年04月11日02:05

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児玉コレクション-北帰行(12)

【児玉コレクション】
「元北海道大学名誉教授児玉作左衛門氏は、第二次世界大戦前後緊急を要するアイヌ民族研究の中で、海外流出などの資料散逸をおそれ、私財を投じアイヌ民族資料の調査・収集に奔走しました。その資料は、わが国におけるアイヌ民族研究の基本をなす貴重な資料として、いつの頃か『児玉コレクション』と呼ばれるようになり、研究一家であった児玉教授とそのご家族によって研究され、その成果は多くの研究機関で紹介されています。」
■函館市北方民族資料館のホームページより
http://www.zaidan-hakodate.com/hoppominzoku/

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北方民族資料館の展示品は、その量・質ともに素晴らしいものであった。これらの展示品の向こう側には、更に多くの収蔵品があるのかも知れない。そうした資料に感激する反面、その解説の中で違和を感じたところが一つだけあった。
それは、「児玉コレクション」に対する評価だ。

「元北海道大学名誉教授児玉作左衛門氏」によるアイヌ民族研究の方法は、現代のアイヌたちから強い疑念を抱かれ、また批判もされている。そうした事情について触れず、児玉(元)名誉教授の業績を賞賛するというのは、「民族」の名を冠する施設の立場としてはいかがなものだろうかと感じたのだ。

しかし、少し考えてみると、この資料館にそうしたことを期待すること自体が無理なことなのかも知れないとも思った。この資料館は、児玉氏による「収集」の成果の上に成り立っているのだ。児玉氏を批判することは、この資料館にとっては「自己批判」を行うも同然のことである。

児玉コレクションが批判されているのは、彼が多数のアイヌの人骨(頭蓋骨)を収集し、その過程で、副葬品などの盗掘、遺族らなどによる同意の無い墳墓の発掘などがあったのではないかという強い疑惑があることによる。その詳細を書くことは、この日記の中では出来ないので、興味のある方は後掲のリンク先をご覧いただきたい。

児玉コレクション問題には、さまざまな側面がある。その中の大きな問題の一つは「少数民族の尊厳」にかかわるものであり、もう一つは「学問と人権(個人=故人の尊厳)」にかかわるものである。

大規模に墓を暴き、大量の人骨を収集するなどということは、それがマジョリティに対してなされたものであれば、たとえ「科学」や「学術」の名の下であっても、「社会」は許さないだろう。しかし、同じことがマイノリティに対してなされると、社会は場合によっては「好奇」の目を向けるのである。
こうした事態について、東村は次のように書いている。

「本稿の冒頭で述べたマスメディアの責任という観点からいえば,児玉作左衛門とアイヌ頭蓋骨の報道 / 表象は彼の学問的権威を支えていた社会の一部である.それは全体として意図的に操作されたというよりは,無自覚的に児玉の権威を賛美し以前の記事の論調に追随することによって堆積されていった.児玉や同業者たちへの賛美は『慣れ親しまれたもの』になっていったのである.そうであるならば,本当に『不気味なもの』とは,人の尊厳に関わる事柄を単なる物質 / ネタとして飼い慣らしてしまう社会の方であり,それを問題と感じず無意識に受容し,あるいは時に突然気づいたかのように騒ぎ立てる私たち(=和人の記者および読者大勢)の感性なのかもしれない.」

東村岳史「アイヌの頭蓋骨写真報道が意味するもの」
http://www.gsid.nagoya-u.ac.jp/bpub/research/public/forum/43/01.pdf

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今日の日記の中では、児玉コレクション問題について、これ以上触れることはできない。
これ以上のことを書くことは、僕の能力と資格を超えている。

ただ、誰であれ、個人の人権は護られるべきであり、遺骸や遺骨にについては尊厳のあるものとして扱われるべきであり、遺族(あるいは民族)の意向は尊重されるべきである。もし、尊厳を侵すような事態が生じれば、それについてはしかるべき回復がなされるべきであると思う。

「函館市北方民族資料館」のあり方一つをとっても、我が国における「民族」問題の未解決問題は色々とあるように思われた。

■児玉作左衛門のアイヌ頭骨発掘(1)
http://www.t-komazawa.ac.jp/university/bulletin/pdf/kiyou14.pdf

■故児玉作左衛門博士収集アイヌ民具資料
「児玉コレクションの受贈並びに同資料の調査について
http://www.ainu-museum.or.jp/info/dayori/dayori41.pdf

■さまよえる遺骨たち−アイヌ墓地「発掘」の現在
http://hokudai-monjyo.cocolog-nifty.com/blog/
■「北海道大学医学部アイヌ人骨収蔵経緯に関する調査報告書」に関する抗議と要請
http://hokudai-monjyo.cocolog-nifty.com/blog/2013/04/post-fbcd.html

■児玉コレクションに対する否定的な評価(例)
http://www.alles.or.jp/~tariq/honehone/kodama.html
http://shuzaikoara.blog39.fc2.com/blog-entry-185.html
http://www.alles.or.jp/~tariq/report/boneCollector/icharpa020802a.html
http://pirikagento.jugem.jp/?eid=43
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