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2015年03月06日23:19

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チロル号の事故報告書

■概要
 個人所属ホフマン式H-36ディモナ型JA2405は、平成25年3月15日(金)、レジャー飛行のため、女満別空港を09時08分に離陸し、北海道茅部郡鹿部町の鹿部飛行場に向けて飛行中に消息を絶った。同機は、同年3月18日(月)、北海道河西郡中札内村カムイエクウチカウシ山の北約1.7kmにある標高1,903mの山の北西斜面で発見された。
 同機には、機長ほか同乗者1名が搭乗していたが、2名とも死亡した。
 同機は大破したが、火災は発生しなかった。

■原因
 本事故は、同機が日高山脈を越えようとして飛行中、山脈の稜線から吹き下ろす下降気流に遭遇し、稜線を越えるための安全な高度以下に下がってしまったため、山の斜面に衝突して機体が大破し、機長及び同乗者が死亡したものと推定される。
 同機が安全な高度以下に下がってしまったことについては、機長が下降気流に遭遇し対地速度が減少する中、最終的に稜線を越えるための安全な高度を確保できるものと判断して事故現場となる九ノ沢の谷に余裕のない高度で進入したこと、及び機長の予想以上に下降気流が強くなり、同機の上昇性能では降下を止めることができなかったことによるものと考えられる。

■航空事故調査報告書
http://jtsb.mlit.go.jp/jtsb/aircraft/detail.php?id=2064

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先日、一件の航空事故調査報告書が運輸安全委員会から発表された。
この事故については、発生の直後、パイロットらの死亡が確認された後に、日記で書いたことがあった。

■チロル号と加藤さんのこと(2013年03月20日)
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1896409566&owner_id=2312860

早くも2年近くが経とうとしている。
随分と時間がかかったものだと思ったが、事故現場における機体調査は、「雪解け」後の7月に行ったとのことだった。事故報告書ではパイロットの氏名は出ておらず、機体もJAナンバーが記されているだけだ。しかし、僕にとっては「加藤さんとチロル号の事故」として、決して忘れることが出来ないものとなるだろう。

報告書によれば、加藤さんの総飛行時間は「5811時間」で、「同型式による飛行時間」は「3171時間」とのこと。ディモナという機種に乗り慣れているということでは、国内ではトップクラスだろう。
ちょっと興味を引いたのは、チロル号の「総飛行時間」が「2,833時間」で、加藤さんの「同型式による飛行時間」よりも少し短かったこと。チロル号は「昭和62年(1987年)3月26日」に製造されたということだから、その大半は加藤さんのフライトだったのだろう。加藤さんは、チロル号に乗る前から、他の同型機(ディモナ)で、訓練飛行をされていたのだろう。

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報告書の中で特に気になったのは、以下の2つの項目だ。

「2.6.2 帯広空港の天気
気象庁帯広空港出張所員によると、事故当日の10時の定時観測時は、帯広空港はほとんど無風で視程は良好であった。」

「2.6.4 事故当日に日高山脈を飛行した操縦士による気象状況
事故当日の10時20分ごろ、AS350型回転翼航空機で札幌丘珠空港を離陸し、11時14分ごろ、日高山脈の北部にある日勝峠(事故現場の北約40km)を気圧高度6,000ft(約1,830m)で山脈の稜線を東向きに(帯広側へ)越えた。
 山脈の西側は積雲系の雲に覆われていたが、東側はほとんど雲のない状況であった。
 稜線の東側(風下側)の気流は悪く、叩きつけるような下降気流があったので、稜線からさらに東側に離れて襟裳岬方向に南下した。野塚峠(事故現場の南東約45km)の稜線に向かって西に(苫小牧側へ)飛行していると、気圧高度3,000ft(約915m)付近で40kt(約74km/h)の向かい風が吹いていて激しく揺れ、11時37分ごろ、野塚峠の手前で激しい下降気流に遭遇した。最大連続出力で最良上昇率速度付近にしても高度を維持するのが精一杯となったので2,000ft/min(約610m/min)程度の下降気流であったと思う。とても峠を越えられないと判断して引き返し、帯広空港に着陸した。」

チロル号(と加藤さん)は、山の斜面に衝突する45分前に、帯広市の上空を通過している。
そのとき、「帯広空港はほとんど無風」だったとのことだ。

しかし、45分後に帯広空港から50Kmほど離れた衝突現場に達したときには、「機長の予想以上に下降気流が強くなり、同機の上昇性能では降下を止めることができな」い状態に見舞われた。

加藤さんのようなベテランをしても、予測したり回避したりすることが出来ない事態であったようだ。

山の天気は変わりやすいと言われるが、それは地表面の天気についてだけでなく、その上空の天気にも言えるようだ。
(「ようだ」と言うのは、僕がまだ、それを自分では直接経験していないからなのだが。)

山岳地帯の上空には、僕にとっては未知のものが、まだまだ沢山あるようだ。
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