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2015年01月20日23:57

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新譜之雑談帖(その178)―ミトロプーロス・マーラー交響曲選集

ミトロプーロス、と云う指揮者は今日余り顧みられる事の少ない指揮者の様でありますが、中には熱狂的なファンも居られる様で。大分以前の某レコード芸術誌で、何処かの大学の教授でミトロプーロスの録音を、それこそ片っ端から集めている方が紹介されていて、大いに驚くやら感心するやらした記憶があります。記憶が正しければ生誕100周年となる1996年に、ギリシャのCBSソニー(だったと思いますが)から、確か100枚程のCDが発売されて、大いに度肝を抜かれたものですが、それも指折り勘定して見るともう20年近くも前の事でありますね。

ミトロプーロスが不運であったのは、十八番のレパートリーがモノラル録音では、十全にその演奏の魅力が伝わりにくかった事、また当時の音楽愛好家が好んで聴く曲目ではなかった事かと思います。それでも一定の根強い人気はある様でして、某親方之声音盤店のウェブ・サイトに、十八番の一つであったマーラーの交響曲の実況録音選集が発売されるとの告知が。

演奏自体は、これまでも色々なヒストリカル・レーベルから発売されているので、特に目新しいものではない、とも言えるのでありますが、わたくし個人はこれらの録音のうち、所有しているのがマーラーの第八交響曲のみなので、些か購入心がくすぐられる所。しかし、わたくし今回再発されるレーベルのCDを購入した事がないので、些かそのあたりが気になる所。以前何処かの音盤店で、此処から発売されているCDを試聴した事がありますが、その時の印象では左程悪くは無かった様な記憶が。しかし、1960年代初頭(新しいものでも)の実況録音でありますから、左程多くは期待できないのでありましょうが。

わたくしは、この指揮者の録音を左程多く所有している訳ではないのですが、度肝を抜かれたのは、プロコフィエフのピアノ協奏曲第三番の弾き振りでありますね。モーツァルトやベートーヴェンあたりのピアノ協奏曲の弾き振りは、左程珍しいものではありませんが、曲がプロコフィエフとなると、敢えて弾き振りに挑む指揮者(或いはピアニスト)は今でも稀ではないか、と。

しかもこの引き振り、確かベルリン初演時の際、本来はピアニストがちゃんと居たのに、そのピアニスト氏が「とても自分には弾き切れない」とドタキャンをかまし、困り果てた主催者が指揮者であったミトロプーロスに相談したところ、「では私が弾き振りでやりましょう」と云ってのけて、実際にやってのけた、というのでありますから驚かずにはいられない所。しかもこれ以降、この曲の弾き振りはミトロプーロスの売りになった、と云うのでありますから、これはもう何と申し上げたら良いのやら。ただただ呆れるばかり(無論良い意味で)。

無論現代のテクニシャンのピアニストの演奏に比べると、遜色がないではないけれど、極端に聴き劣りがすると云う訳ではないのは、驚嘆に値するとわたくしは思って居ります。もう少し、この指揮者の真価を発揮する、状態の良い録音があれこれ出て来ると面白いのですが。


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