『サンバ』

『サンバ』

フリーパス第６弾

　オマール・シーのムダ使い、シャルロット・ゲンズブールのムダ使い。
『最強のふたり』の出来は何だったのかと首をかしげたくなった。
上記作があまりに良かったので、過度な期待はすまいと肝に銘じて置いたものの、それを遥かに下回る印象。

　エリック・トレダノ&オリヴィエ・ナカシュ監督は『最強のふたり』と同じくオマール・シーを主演に、相手役にシャルロット・ゲンズブールという手堅いキャスティングで臨んできた。
扱うテーマは欧州の中で問題になっている不法移民問題についての考察。
今回のオマールの役どころは、コックを目指して真面目に調理場で下働きするサンバ（オマール・シー）という独り者。
些細な手違いから国外退去になりそうになり、移民支援のボランティアスタッフのアリス（シャルロット・ゲンズブール）と親密になっていく…というもの。

　激しいぶつかり合いが溝を埋めるのはよくわかるけど、そもそもの動機が不明。
確かにサンバの笑顔は魅力的かもしれないが、アリスの惹かれる根拠が浅い。
彼女も問題を抱えるのだが、社会からはじき出された弱者というだけでは劇中ほどの強いリンクは感じられない。少なくともサンバは健康体で言葉も問題がないのだ、彼以上に問題を抱えた不法移民は大勢いるだろう。
最初の担当ケースだから特別に思い入れを？
…だとしたら未熟な動機。

　自国民じゃないと気がつかないようなロケーションは興味深く見られるものの、解決手段に唖然…。
元をただせば自業自得の側面は否定できないのに、甘さを通り越してズルいとしか言いようがない。
生きるためには全ての手段は正当化されるという見識なのだろうか？
だが、それでは問題の方向性が不明瞭になり、自尊心の回復にはつながるまい。
これでは踊れない…。



　フリーパスだから金返せとは言わないが、時間を返してほしい。
現時点で今年のワースト候補…って、もう今年も残りがないですがな〜。w