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2014年03月23日19:14

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893 マンドリン・フォーマット 3

3/11の日記で紹介したマンドリン・フォーマットのオルゴール(写真1)ですがヨーロッパの工房に頼むことになりました。

見積もりをお願いしていた工房から、YouTube を良く聴いて、写真を良く見てから回答を送ってくれました。最低限、全面的なリピン(ピンの植え替え)と新しいダンパー、駆動系の点検と調整が必要とのことです。ただしよくわかっていない人が変な修理(たとえば櫛歯の研摩)をやってしまっていた場合は、それの復元修理をやってから着手となり余計に作業時間がかかるそうです。彼の見積もりによると通常の修理だけで数十時間必要、時給を掛けると数十万円の人件費と部品代10,000円程度が必要です。この他に航空運賃や保険料、輸入時消費税等が必要です。

メールによれば彼は箱の修理(木工作業)はやりませんが、他の作業は外注に出さず全て自分で行います。作業に必要な期間は6〜12ヶ月ですが、交渉の余地あり。彼は今57歳でシリンダー・オルゴールとディスク・オルゴールの修理に34年間携わってきたベテランです。

彼はMBSGB(イギリスのオルゴール愛好家のクラブ)の機関誌The Music Box2009年冬号(写真2)に珍しいシリンダー・オルゴールの修理に成功した興味深い記事を寄稿しています。その記事のオルゴールはピンの長さで音の強弱を表現するフォーマットでシングルコーム・ロングピン・ショートピン・フォルテピアノ(以下SCLPSPFPと略します)で、自鳴琴の30号26ページ〜35ページに私の翻訳で詳しい説明が掲載されています。

このSCLPSPFPタイプのオルゴールのリピンニングは困難を極めます。彼はこのタイプで事故(多分ラン)を起こしたシリンダーのピン(曲がってしまったためにどれがフォルテ強音で、どれがピアノ弱音かわからなくなっている)の植え替え作業を実施しています。

1. 最初にシリンダーを硫酸に浸けて、鉄製のピンを全て溶解。
2. 全ての穴に短いピアノピンを入れて固定。
3. 通常のやり方でピンの高さを砥石と旋盤で研摩して揃える。
4. 注意深く演奏を聞いて、音楽的に強い音が必要な部分のピンを引き抜く。MBSGBの記事の例では7,500本のピンの内3,000本をフォルテピンに植え替えるために引き抜いたそうです。
5. 穴に太くて長いフォルテピンを打ち込んで固定し、ピンの高さを砥石と旋盤で研摩して揃える。
6. 最後に演奏を良く聴いて必要ならばピンの修正を行うが、この作業が最も経験と音楽的センスが必要なようです。

このオルゴールの修復には全部で250時間掛かったそうです。修理に要した費用も軽く150万円を超えています。

彼はシリンダー・オルゴールの修理で最も困難と思われる作業を成し遂げて、イギリスの専門雑誌に記事を執筆しました。彼は腕前においては世界一流と思いますが、多分値段も一流なんでしょう。このオルゴールで日本のオルゴール愛好家たちにオルゴールの復元修理のお手本を見せてあげましょう。

スイスに在る博物館の工房にも見積もりを依頼して、月曜にはメールで入手できると思います。比較した表を作って、どちらにするか決めなければなりません。

写真3はおそらく日本唯一の、調子よく稼働するSCLPSPFPオルゴールです。
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