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2013年09月11日12:20

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飛ぶボールの憂鬱

 プロ野球、ヤクルトスワローズのバレンティン選手が昨夜、54号ホームランを放ち、王貞治さんが持つシーズン本塁打の日本記録55号を抜き去ることが確実となった。
 過去にローズ選手やカブレラ選手が55本、バース選手が54本を放っているが、記録更新には至らなかった。それがなぜ今回のバレンティン選手は記録更新が確実なのかと言うと、残り試合が二十三試合もあるからだ。
 ローズ選手やカブレラ選手がこの記録に迫ったのは、シーズンの残りが三試合とか四試合のときだった。この程度なら、王選手の記録を守りたい日本のチームは勝負を避け、平気で四球を連発する。
 ぼくは何度となく繰り返されるそういう光景を苦々しく見ていた。ある外国人選手は日本のこういうやり方にこう苦言を呈した。
「記録を抜かれたって、ベーブ・ルースはベーブ・ルースじゃないか」
 その通りである。記録を抜かれたって王さんの偉大さは一ミリたりとも減らない。それなのに、日本のチームはこうして王さんの記録を守ってきた。そんなふうに保護された記録にどんな意味があるだろう。
 そうした呪縛から、今ようやく解き放たれようとしている。いくらなんでも二十三試合も四球で逃げ続けるわけにはいかないだろうから。だから、記録更新自体はぼくは喜ばしいことだと思っている。

 だが同時に、とても憂鬱にもなっている。
 バレンティン選手のホームランをニュース映像やYou Tubeで見ると、きっちりとバットがボールの芯をとらえた打球は驚くほど少ない。多くはボールのほんの少し下を叩いて大きく舞い上がった打球が飛ぶボールによって観客席まで運ばれているのである。つまり、パワーもあるのだろうが、“ボールをバットに乗せる技術”が長けているバッティングなのである。手打ちが多く、それはフォロー・スルーにもよく出ている。それでもホームランになる。
 ぼくには、王さんの記録が今シーズン最高のホームラン・バッターではなく、飛ぶボールによって破られるように見えてならない。
 飛ぶボールが野球をつまらなくしているのは確実だと思うのだが、これが変更されるニュースも聞かない。
 ぼくはそのことがとても憂鬱なのだ。
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