『アナタの子供』『黒いスーツを着た男』＠フランス映画祭2013

　ようやく友人よりスーツケースを借りてきて、本格的に荷造りのスタート。
いろんなサイトを見ると己の準備不足に焦ってしまうが、何とかなるかなぁ。
スーツケースが思いのほか大きかったので、「あれも入る、これも入る」と入れてはマズイでしょうな。（笑）

　パスポートの紛失に備えてコピーをとるのはいいとして、念のための写真って持参した方がいいのかな？

　とりあえず、マゴマゴしていると溜まった＜フランス映画祭日記＞が上がらないので、長くなるけど二つづつアップします。


『アナタの子供』

　90分で描けるラブ・ストーリーを136分もかけて語る辺りがフランス映画らしい。
一見、ありきたりにも思える三角関係のもつれを描いた作品を“特別なもの”にしているのはそういう部分であろう。まさにフランスからしか誕生しえない作品かもしれない。

　ジャック・ドワイヨン監督が久方ぶりに愛娘ルーを主演に迎えての作品。
アヤ（ルー・ドワイヨン）は別れた元夫ルイ（サミュエル・ベンシェトリ）と必要以上にコンタクトを取り合う。リベラルな現在の恋人ヴィクトール（マリック・ジディ）は理解を示すがアヤの心は二人の男性の間で揺れ動く。その様子をまるで守護天使のように見守り、時には嵐を呼び起こす娘リナの愛らしさが印象的。
どれほど幼くとも女性は生まれながら女優なのだろうか。（笑）

　魅力的な男性二人に引き寄せられる三角関係だが、観客には結末が読めない。
どちらの方が一方的に優れていると感じさせないバランスを心がけているからという話だが、瑞々しい映像が魅力的。

　視点を定めてハンディカメラによる長回しが特徴でもあるが、どこからどこまでシナリオ通りなのか分からないほど臨場感と自然な描写を感じる。（てっきりマイク・リーのようなアドリブによるお芝居かと思ったら、しっかり脚本があるということ。あらまビックリ！）

　ラブコメにしては長尺。見る人によっては＜幸福な長さ＞と受け取る向きもあろうが、個人的には少々長く感じた。編集作業でギリギリまで絞る混む作家も多いと思うが、ジャック・ドワイヨンは撮影時点で編集作業を終えているのだろう。



　監督と主演のルーによるトークショーがありました。





　これまで見てきた中ではかなり濃いお客さんと質問でシネフィル的な突っ込んだ質問もあり、一般ファンにはハードル高い（けど、充実した）内容でした。



　残念ながらサイン会の整理券は早々に終了…。（涙）
（朝10時20分の受付から一日分を配布するが、10時40分頃に行った時にはもうなかった…。ちなみにこれは夕方からの上映作品）


『黒いスーツを着た男』

　弱い心ゆえ犯した罪から逃げ惑う男（ラファエル・ペルソナーズ）が、目撃者と対峙することで自身を見つめなおす。
将来を嘱望され、順風満帆な人生を送る男に訪れた思いもよらぬ試練。
誰もが逃げたい気持ちはよく分かる。
実際、主人公の男は一度は逃げる。だが、最終的には“自分の影”から逃げ切れる人などいやしない。

　テーマはズバリ＜贖罪＞。映画に描かれる事故そのものはカトリーヌ・コルシニ監督自身の体験が基になっていると聞く。
（…と聞くと、今でも心の底では許してはいないのだろうか。あるいは、この映画を作ることが監督自身、壁を乗り越えるためだったのか）
不法就労、移民問題、格差社会などの社会性も織り込まれたサスペンスだが、単純な解決を見せない点に深みと後を引く余韻がある。コントラストの効いた映像がサスペンス映画らしい。
アラン・ドロンの再来とも言われるイケメン俳優ラファエル・ペルソナーズは必見。覚えて置いて損はないはず。（笑）

　目撃者となるヒロインのパートナーが講義するモンテーニュの名言がいいスパイスとなっている。
人は失ってこそ気がつくことがある。
ラストシーンこそ、観客自身への問いかけであろうが、表情が全てを物語っている。



8月31日よりヒューマントラストシネマ渋谷他　全国順次公開予定

　上映後にはイケメン俳優ラファエル・ペルソナーズとカトリーヌ・コルシニ監督によるトークショーがありました。







　イケメン俳優はまるでツバメのように（失礼）、監督の隣で鎮座しております。
監督さんはかなりシビアな印象を与える。
Ｑ＆Ａの最中にほとんど笑顔が見えなかったのは緊張感だけではあるまい。