TOKYO FILMeX 2012 第13回東京フィルメックス
閉会式と『サイの季節』
言葉を使う人物から言葉を取り上げるとはなんと残酷な仕打ちか。
実際に30年間投獄されたクルド人詩人をモデルに『ペルシャ猫を誰も知らない』のバフマン・ゴバディ監督がトルコで撮影した映画。
表現の自由が制限される国はいまだに多々あるが、監督自身が亡命生活を余儀なくされていることを考えれば、この
主人公には当人が投影されていると見るのが妥当だろう。
出所して、すでに自分は死んだと思わされている妻を捜し求める旅にでるのだが、そのイラン人妻を
イタリアの至宝モニカ・ベルッチが(おそらくスッピンで)演じる。
いかにゴバディ監督が映画人に注視されているかは冒頭マーティン・スコセッシ・プリゼンツと出る事からも伺えよう。
イスラム圏映画では絶対出来ない表現をモニカ・ベルッチの肉体を使い解き放たれたように描写しているのも特筆すべきか。(モニカ・ベルッチが出演している段階で“お約束”か?)
イランの監督らしく、いたるところにメタファーが隠されているように思う。
とりわけ随所に登場する動物たちは何をさすのか。
されどシュールな夢とも心象風景ともつかない絶望的とも思える荒野の風景など含めそれとなく推測はつく。
言葉による説明が極小ゆえ難解な箇所も残すが、30年前と現在をつなぐ(仕組まれたかのような)
皮肉な運命の出会いも含め強烈なインパクトを残す。
監督が来日してのQ&Aが家族の問題とやらで急遽中止となったのは残念だった。
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順序が前後するが、映画に先立ち閉会式がとりこなわれた。
正直な話、コンペは一本も見ていないですが、少し紹介。
まずは各賞の受賞式。
タレント・キャンパス・トーキョーの受賞企画、「The Road」のプロデューサー、中国の
リー・シャンシャン。
功労賞にイランの俳優
ベヘルーズ・ヴォスギー(『サイの季節』)を選出(ただし来日はせず)。
観客賞には
キム・ギドクの『ピエタ(原題)』
この人はキム・ギドク監督じゃなく配給のキングレコードの人。(笑)
学生審査員賞のプレゼンターとして壇上に上がった三人。
山戸結希、三原彗悟、長井龍。
受賞作は
『あたしは世界なんかじゃないから』。監督の高橋泉。
場内にお仲間が数人いるらしく終始歓声が飛ぶ(笑)
審査員特別賞のプレゼンターはファテメ・モタメダリア(イラン/女優)、ヴァレリ=アンヌ・クリステン(フランス/ユニフランス・フィルムズ日本支局長)のお二方。
受賞作は
『記憶が私を見る』賞金30万円(監督:ソン・ファン)
最優秀作品賞のプレゼンターはダン・ファイナウ(イスラエル/批評家)秦早穂子(日本/批評家)。
受賞作は
『エピローグ』賞金70万円(監督:アミール・マノール)
終始メモを読み上げながらの感謝のコメントでした。
正直驚いたのは賞金の低さ。
そこそこの漫画の新人賞の方が賞金は高い。
これが現状なのかしら…。
総評として壇上に上がった審査委員長の
SABU監督。メインなのにサブとはこれいかに…。(笑)
会期中、
他の審査員から「オバマに似ている」といじり倒された…と述べると会場はどっと沸く。確かに似ている。お笑いの物まねタレントより遥かにね!(笑)
最後に登壇したのは林加奈子ディレクター。
帰り間際、エスカレーター脇に立ち一人一人に頭を下げていた姿が印象に残った。
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