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2011年11月26日22:16

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追悼、談志師匠

 談志師匠が亡くなった。
 日本のお笑い界にとって、大きな損失である。
 偉大な落語家を失ったというだけにはとどまらない。なぜなら師匠は、プロの芸人たちに「あの人に認められたい」と思われる存在だったからだ。
 落語家を目指している者は直接弟子入りし、漫才や漫談を目指している者は弟子にはならないが、寄席などで師匠と一緒になったとき、師匠に自分たちの方向性が間違っていないかどうか判定してもらった。無名だったころの爆笑問題がそのようにして師匠に意見を求めた話は有名である(そして出番が終わって楽屋に帰ってきた彼らは、師匠に「天下取っちゃえ」と褒められて自信を深めたのだ)。
 ビートたけしですらそうだった。オールナイト・ニッポンにゲスト出演した師匠に「師匠のような路線で行きたい」と言い、じっさいに弟子入りを果たした。
 芸人たちにとって、どこかのテレビ局の演芸大賞を受賞するよりも、もっと極端に言えば客に受けるよりも、談志師匠に認められることのほうが価値が高かった。
 師匠はそういう存在だった。

 ぼくは落語初心者に対しては春風亭昇太さんを薦めている。初心者には落語を好きになってもらわなければならない。それには昇太さんの新作落語が打ってつけである。分かりやすく、軽快で、垢抜けていて、そして、突き抜けた笑いがある。
 だが談志師匠は薦めない。よくメディアでは「古典を現代風にアレンジ」したと評されているが、それを理解するには、まず元ネタの古典を知らないと師匠が何をどうアレンジしたのか理解できないからだ。
 それはともかく、ぼくの師匠の印象は、その日の客の雰囲気をつかんだアドリブが天才的であることだ。ぼくが最後に師匠の落語を見たのは十年以上前のこと。埼玉県の越谷でだった。演目は忘れたが、やはりそのときも客の呼吸を読み、アドリブをさく裂させていた。たいしたものだと、笑うよりも感心してしまったことを覚えている。
 冥福を、心より祈る。

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