アレックス・シアラー著『チョコレート・アンダーグラウンド』読了。
舞台は現代のある国。政権を握った〈健全健康党〉がチョコレート禁止法を発令。そんなおかしな法律に従えるかと、二人の少年が立ち上がるという物語。
かつてのアメリカの禁酒法時代のように、チョコレートの〈密売屋〉が現れたり〈地下チョコバー〉がオープンしたりとユーモラスな展開も見せるが、読み進んでいくうちに、二人の少年の目的が単純にチョコレートなのではなく、自由であることに気づいた。
その証拠に、本文の「チョコレート」を「自由」に置き換えても不自由なく読める。つまりこの物語は、一見、童話のようなおもむきがあるが、実は人間にとってとても大切なことを描いているのである。
この本の存在を知ったとき、チョコレートの熱烈なファンの一人として読もうと決意した。同時に、読み終わったときにはきっとチョコレートが食べたくなるだろうと予想していた。
だが違った。
チョコレートが自由の象徴として扱われているせいか、気安くホイホイと口に入れていいものとは思えなくなってしまったのだ。もっとありがたさを理解しなければいけないんじゃないかと。
本の表紙に「読めばきっとチョコレートが食べたくなる」と書かれているが、ぼくには当てはまらなかったわけだ(まあ、おかげで食べすぎないで済むのだが)。
それはともかく、読みやすいし表紙や本文の活字がカカオ色になっている装丁も心憎い、素晴らしい一冊であることは間違いない。
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