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2011年06月21日10:59

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新井順子著『ブドウ畑で長靴をはいて』

 フランスに八ヘクタールの無農薬のブドウ畑を持ち、現地でも高い評価を受けるワインを生産している新井順子さんの奮闘記。
 無農薬畑とひとことで言っても、今は無農薬でも過去に農薬を使用したことがある畑がほとんどらしい。そんな中、新井さんは一度も農薬が使用されたことがない完全無農薬畑を購入。ズブの素人からワイン作りをはじめる。
 2002年には野鹿に若芽を三分の二も食べられ、2003年には洪水で樽の三分の二以上が流され、2004年は冷夏、2005年には四センチものヒョウが降ってブドウの実の三分の二以上が被害を受けるという困難に次ぐ困難に直面するも、完成したワインは高評価。
 最初は「アンタ、中国から来たのかい?」と質問してきた地元の人たちにも認められ、「日本ではどんなワインが好まれるんだい?」とまともな質問を受けるようになる。
 新井さんは作業のほとんどを人にまかせ切りにせず、自分でもこなす肉体労働者である(だからこのタイトル)。そういう、自然とともに生きる人がたどり着く境地はいつもこうだ。
「ロワールで暮らすようになってから、薪をくべるときにも自然によって人間も生かされているとつくづく感じるようになった。都会で暮らしていると便利すぎて、そんなことはすっかり忘れてしまう。もともとせっかちで効率的でない時間の使い方は嫌いだったのに、最近は一見無駄だと見えることが大切に思える。そういう時間があるからこそ、何か自分の中の野性の勘みたいなものが研ぎ澄まされてくるし、人智を超えた自然のリズムみたいなものもつかむことができるようになってくる」
 そうなのだ。ぼくは肉体労働者ではないが、登山が趣味なせいか、その気持ちは実によく理解できる。ぼくにも「一見無駄だと見えることが大切に思える」ことがある。特に最近は多い。
 こういう人物が作ったワインが美味しくないわけがない。
 結論。新井さんが作ったワインを飲んでみたい!

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