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2026年09月19日11:46

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「あと1年、コイツのために生かしてくれ」レレレの蔦重、最後の仕事。

【江戸新説】

「あと1年、コイツのために生かしてくれ」
 レレレの蔦重、最後の仕事。



 レレレの蔦重こと蔦屋重三郎、己のが「命の札」の切れる前に仕掛けた最後の仕事の話しです。
 日本橋、通油町(とおりあぶらちょう)を出て、最後の「仕上げ」と仲間への「思い」を振り分けに、「まっつぐ」三重・松坂までやって来た。一心不乱で駆け込んだ、その先には、日本一が待っていた。本居宣長先生です。さあ、どうする、どうする、


「先生お願いしやす」。
 蔦重が本居宣長に必死で頼むその口上に、
(へ、へ、いいよー)
 宣長先生、思わず知らずユルんじゃった。

「洒落が「あはれ」で帰れない」でゲス。
 で、レレレの蔦重でございます」

(ここで、井上陽水の「帰れない二人」)
 思ったより〜も、夜露は冷たくて

「なんですから、あっち江戸にまるっきり帰れません」
 蔦重の頭の中には、源内先生が、山東京伝が、衛星のように回っている。
 どうしても死んだ仲間のこころを言葉にしたかった。
「線香切れにするわけにゃあ、いかないんですよ、先生ーッ」
「べらぼう」の時代を言葉にしなきゃ、死んでも死に切れねぇし、死んだら化けてでる、ねぇ源内先生。
 あ、死んでるか。

         ○ 

 蔦重、やにはに一枚の浮世絵を付き出した。
「先生、これをひとつ見てくだせい」
 宣長、目の前の浮世絵に目を止める。
(ム、ムッ、これは俺だ、どうしたんだ)
 宣長先生、内心はたまげている。

「先生、洒落と「あはれ」をどーかひとつにしてください」
「糊は、”どっこいオイラは生きている”、こいつの面(ツラ)でごぜぇます」

 浮世絵は「奴江戸平」、手指がそっくり返っているが大きな鼻が目印だ。
(やっぱり、俺の顔…えー、なんのたくらみだ)

         ○ 

「フー、洒落臭いことを」
「…シャラくさい、シャラくさい、先生、まずそいつをいただきだ」

 さて、もうひとつ。

「粋」という語源、出典はいまだに定かではない。
 確かに体系化したのは、九鬼周造の「いきの構造」を待つしかないが、その実体は、蔦重たちが作り出したものに違いはない。
 そしてねぇ、蔦重が本居宣長先生に直談判でお願いしたんじゃないか、という仮説が今日のキモ。よーがしょ。米を卒業してパンにしたから、粋なんてのじゃ「べらぼう」たちに申し訳がたたねぇ、よーん。

 あーだこーだの庵の中、宣長先生、幕府に秘密で捻り出した。
「”どっこいオイラは生きている”の域でどうだ」
「宣長先生…ここはひとつ洒落で、おねげぇします」

「うーん「もののあはれ」と「洒落」をひとつにしたい。いわば縁談だな」
 その途端、やまとの方から「もののあわれ」が真っ赤な火の玉でやってきた、
 お、お、おー、江戸からは「洒落」が青白い顔で素ッ飛んでくる。
 松阪の空で、ドッカーン、化成の核融合(一応、合体と言うことで。内緒ですから)。
 ジュワーンと光が広がって、蔦重はっと目を覚ます、と宣長先生、(去っちゃってる)髪を振り乱して仕切りに文字を書いている。

 息も絶え絶え、ものすごく〜、(ほら、芝居はいいから、早く、早く)髪サンばらで江戸平になりきった宣長先生、そいつを差し出すと
「おい。これでどうだ」
「……あはれが、ひとつ純になって生き返り、粋となる。仕上がりだなもし」先生ニハカニ訛ってる。
(おー、あはれが、洒落て、息吹き返したぁ、てぇしたもんだ)
(こいつぁ、洒落だ、本物だ…これにゃあ、ちぃちぃパッパッ、母、泣き出す)
 蔦重、宣長先生の膝前の大和紙に、モロにオデコから飛び込んだ。
「フワーッ、ちげぇねぇ、これなら二つが引っ付いて」
 はいいが、よく見なよ、文字が半分、オデコに写ってる。
「あ、あ、あ、先生、ありがた山でございます」
 蔦重、一目散で江戸に大返し。後はかくもご存知のごとし。

 このひと文字を見てですよ、死んだ源内先生、目を開けた(らいいのにな)。

         ○ 

 もののあはれ」に続く文化論は「粋」、
「あはれが、洒落で生き返る、純になって粋になる」
 どっちも本居長先生の作という新説です。

 蔦重も、よろしくね。

 レレレ、お戻りですか、蔦重さん。
「さっき、1年って書いた”状差し”を担いだ飛脚が、お店に飛び込んだばかりですよ〜」

 注:粋は元来、純になるという意味です。「もののあはれ」が洒落で純になって息を吹き返した、という見立でございました。

      ー了ー
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