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2025年02月09日08:13

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「上を向いて、歩(あ〜る)こうよ」

「空気を読む」というのが日本の無責任社会を作り出してきた。
 ぼくはずっとそう言ってきたわけですね。ところがこの(失われた)30年は、日本人に見えないところで「空気を読む」を大化けさせていた。進化といっていいのかもしれません。
 それは想像通りで、「忖度」です。
「忖度」というのは、利益をくれそうな相手に(暗黙のうちに)少しばかり手を貸すという意味なんだと思う。
 だまって相手に
「良かれと思ってやっておきましたよ」
と従順の意思を示すお手つだい行動をすることで、
「そーか、わかっちょる」
と黙って利益のレールが敷かれるという「空気を読む」の一段階発展した状態です。

                ○

 安倍政権の末期に「忖度」は仕切りに話題に上るようになった。
 世の中が停滞し、それでいて権力は固定化している。すると蔓延してくるんだね。簡単に言やあ、「ゴマスリの時代」だ。ゴマスリのいろんな形をしたお化けが世の中にウロウロして、いやーな時代になっていた。
 興味深いのは、「忖度」といえば必ずでてくる財務省の佐川局長ね、彼が
「とっても下に厳しい人だった」
という声が出てくること。「忖度」が、権力の固定化の産物ということが、あの顔からも、よーくわかります。
 
                ○

 で、「空気を読む」は日本社会の中でいかに連綿として存在していたか。その紛れもなきひとつというか、歴史的産物を出して見ます。

 それは「海軍反省会」というもの。すごい名前ですが、すごいんです。
 主に海軍エリートだった軍令部の将校たち(つまり参謀将校)が年に一度、極秘に集まって、戦争のさまざまを反省する会で、その内容がそっくりテープにとって保管されていたのです。
 それを、NHKが4日連続の特番に組んだのです。
 
 参謀将校というのは金の飾緒を下げたエリート中のエリートで、一般人には
「どんな立派な話が出てくるのか」
と思うくらい、言わば神がかったほどの俊英だった。

 そこで、でてくる、でてくる。次々と世話話(せわばなし)に近い語りが、出てくる。
 はじめてづくしの内容でね、おどろくこともあったね。

 もちろんぼくは、ほとんどを知らなかったし、中で興味深い話しもたくさんあって見ていた。
 で、その中で気になったのが
「またも見たか日本無責任社会の構造」というやつだね。

「えっ、このひどい結果の責任は誰がとるの」
「誰がといっても、まあ、会議で決まったことだから」
「誰がどうこうしたというより、そういう空気だったもんでね」
 でね、責任の位置は曖昧なまま、空気となって次に流れて行く。まさか。いえいえ本当です。

(本当なんだ。いまや70歳80歳になった元・俊英は、当時も曖昧なままやり過ごしたことを思い出し、思い出し話すんだ。たまらんなぁ)

 開戦もそうなのだけど、はっきりわかるのは戦犯責任だった。
「捕虜の処刑は誰が決めたのか」と探ると

「軍令部では、そういう空気だった」
「参謀が、その空気をバックに現地に飛んだ」
「現地の司令部は、その空気を受け実行に運んだ」
「兵隊は命令され、実行した」
となる。(命令の伝達の所在は、はっきりしない)

 で、戦後、裁判にかけられ、空気は罰することはできないわけだから命令の所在が(連合軍によって)確認できたところで、戦犯責任が確定し処刑されていくんだね。

 うーん、まあ、いまだよく見る日本社会の姿だ。

 部下のために
「わたしが命令した」
と発言した現場の指揮官はどんどん処刑されていく。
 この辺で老参謀たちは無口になり、時に曖昧をなじる声が聴こえたりする

 ところが山本七平氏の著書の中などによれば、空気をつくった将帥たちは、ほぼ「………………」なんだ。
 理屈を言えば、
「命令を伝達した覚えはない」
ということになろうか。
 
 著書「私の中の日本軍」で山本七平氏は
『将帥たちは高僧のようになり、見事に無言になった』
と書いてある。

 で、まあ、何を言いたいかと言えば「日本的無責任社会の構造」と「空気を読む」はなかよしということだ。

 とりあえず「空気を読む、読める」というのがとてもよいことのように言われていた時期もあるのだけれど、
「ほんとかいな」
といつも思っていたぼくなぞは
「そう、そう、危ないんだ。こうなんだから」
とテレビを見ながら声を出しそうになったし、すかさずたくさんの人に伝えたくなって振り向くと、誰もいないので、ガッカリした。

「空気を読む」と、どうなるのかと言えば
“悪い時には責任をとらされる”と、まあ、覚えておくとよいのではないか。これが一番わかりやすい判定法だと思う。

               ○

「空気を読む」も、
「忖度する」も、
言わばゴマスリの呼び名で、時代の相に合わせて姿を変えているに過ぎないね。

 このゴマスリには代々歴史的な名レトリックがあるのだけど、元祖となるフレーズを教えます。
 うまいんだあ、これが。美しいし見事な、そいつは
「上を向いて、歩(あ〜る)こうよ」
 です。
 植木等が「日本一のゴマスリ男」でスクリーンから呼びかけるまでは、「上を向いて、歩(あ〜る)こうよ」が他にハケ口のないヒラリーマンの自虐ワードだったのでした。
 何度見ても、うまい。
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