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2024年12月20日22:20

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「妖しい二刀流」、ナベツネの死。

 ペンは剣より強し。
 権力は剣より強し。

 ナベツネが死んだ。例えてみれば刺又と刀、二つの武器を持つヘンテコな姿の政治権力はそのままの異様な姿で死んだ。
 複雑怪奇な人なので全容を語るのは簡単ではない。なのでナベツネ・オリジンの「妖しい二刀流」に絞って話をしようと思う。

 権力に近づく政治記者だったナベツネは、(はしょっています)権力と一体化するまで突き詰めついには自分自身を政治権力にまでのし上げた。ナベツネは中曽根という政治権力の一部だった。それをテコに、老年には、ナベツネは「ナベツネ」という壮大な権力になっていた。
 
「ジャーナリズムというのは、そもそも権力に近づきすぎたらいかんのではないか」
 このヘンテコさの、答えはすぐに出ます。ジャーナリズムは権力から距離を取ることで批判ができます。近づきすぎればなにが起きるか。真っ当な批判はできない。「御用新聞」という言葉はここから出ています。
 権力に近づきすぎたジャーナリズム、権力の一部と化したジャーナリズムが発するものは、プロパガンダと言います。ジャーナリズムとはまったく似て非なるものです。

「是々非々、内側から報道するのさ」
などというエセはいつの時代でもいましたが、真っ当にながらえたものはいません。
 いわば、このジャーナリズムの一丁目一番地を守らないナベツネ。
「一体どういうやつなんだ」
という声が出るでしょう。

 緒方竹虎の話をします。朝日新聞の主筆だった緒方竹虎は請われて政界入りをします。
「次の総理として政界入りしていただきたい」
という招きに沿ったはずだが、政界入り後、あっという間に力をなくします。主筆という看板を持たない緒方は、老練な政治家たちにとって「赤子の手を捻る」ようなものだったのかもしれません。

 豪快と言われるナベツネだが、格別の慎重さも兼ね合わせている。あきれるほどの慎重さは、代々の権力者の定番の持ち物です。
「主筆という看板を手放すと、一気に力を落とすかもしれない」
だから、だから(かつての緒方への)懸念がついにナベツネを死ぬまで主筆を押し通させた。というのが奥の奥の心情なのだろう。

 ジャーナリストのありようなどの理屈もなにもかも百も承知で、守りの武器をどうしても手放さない、行動だったのだ。

 堂々とした話しぶりや、上等な背広にごまかされちゃあいけない。
 ナベツネの持つジャーナリストの文字は見せかけの偽物で、権力者というのが本当の姿。発信はほぼすべて計算されたプロパガンダと思うのが正しいのだろう。

『分をわきまえなきゃ。たかが選手ごときが』
この発言だけが、唯一発信された地声の本心で、見せかけを取り払った発言なのだろう。この『分』とは「身分」という意味でしかないだろう。どうひっくり返して見てもね。
 日本は中世に逆戻りしたとでも言うのか。
 声の出し方さえ、どうにも中曽根に似ているなあ。差別したがる人間の系譜にある人。

 ジャーナリストで「身分」を主張する人間は、ただの一人もいないだろう。馬脚どころか妖怪が正体を見せた瞬間に近いのだろう。あまりに巨大な権力に包まれると、無防備な空間ができる。その空間の中から思わず出てしまった声だった。
 
 しかしながら主筆という看板を許していた読売の意思はどこにあるのだろう。巨魁ナベツネの前には、ヤギのように従順だったとでもいうのか。ナベツネという唯一神を上に置くことで、読売のジャーナリズムは崩壊しかけていた(ような気がする)。きちんとしたジャーナリストは一人もいなかった、と言われても一言もないはずだからだ。それが、どう変容していくのか。

 政治のすべてがいけないというのではない。もし、政治権力でありたいと思うなら主筆という看板を外すべきだ、というのがぼくの主張。それがフェアネスというものさ。
 素手で権力に対峙するジャーナリズムを志向しなかったナベツネに、ぼくは勇気を感じない。声音とは違う弱さを感じるのだが、どうだろう。

 当分の間は、愛妻家であったり、人なつこい笑顔だったりを見せつけられるだろう。人間は総合で、いろいろな面がある。だがね
「笑顔に騙されちゃあ、いけないよ」
というのが意外と大事なところだろうと思う。
 権力は、時に節分の「豆まき」のように上からご祝儀をまき散らす。その時、極上の笑顔をしているはずだからだ。

 ほら主筆という看板を外して、分をわきまえなきゃいかんよ。あなたは立派な権力者なんだから。
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