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2024年05月13日07:09

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流星のひと。46 サヨナラ、お母ちゃん。

「お母ちゃん、いままで苦労をかけてごめんね」
「もうこれからはお母ちゃんと暮らすわ」

 人はどんなことから親と音信不通になることができるのか。藤恵子は母親、澄子さんと長い間、見事に音信不通だった。母親は、マスコミに娘の体裁のために
「連絡はありました」
と言うものの実際はまったくなかった。そうした中、澄子さんは
「純子はどうしているのかなあ」
母親の妹、圭子の伯母に時折、尋ねていた。
 
 母親にとって、言わば行方知らずの圭子なのだが、ニューヨーク暮らしをはじめてから絶縁していた母の高島平の家に、突然やってきた。2010年2月ことだった。
 親不幸をすまないと思ったのか、他の理由なのか。そもそも音信不通ほど親不孝はないのだが、親の悲しみをどこまでわかっていたのだろうか。あきれるほど疎遠だった。
 それとも母親の体に何か不調があり連絡でもあったのか、そういう疑問もかすかにあるのだが確証はない。
 その時、下げてきた紙袋には3,000万円が入っていた(とされている)。その紙袋をそのまま母親の前に押し出した。金額から見ても、あの時(ニューヨーク暮らしのために)、売り払った綾瀬のマンションの代金と言う意味があったのかもしれない。
 その紙袋を実際に手に下げてきたのは、あの西新宿の同居人だった。
 
 お金は、
「マンションを買って、一緒に住もう」
という意図なのだが、母親は突然の申し出をなかなか信じることはできなかった。伯母が話の先に立ち、広尾のマンションに一緒に住むことでことを進みはじめたのだが、残念なことに母親の予測はあたった。
「もういい」
1週間暮らしたところで、この一言でどこかに帰ってしまった。

 母親の高島平の隠れ住まいは、また空っぽになった。
 それから半年後の11月、母親、澄子さんは亡くなった。

「もういい」と言う藤圭子の言葉に、何を読み取ることができるか。普通に考えれば、
「もう飽き飽きしたわ」
「テストしたけど無理、無理だとわかったわ」
となる。 ぼくは当初、藤圭子が自ら同居は無理だと判断したのだ、と思っていた。宇多田氏の言う類まれな「気まぐれ」がここでもやっと生まれそうな母親との最後の平和な暮らしをぶち壊してしまった藤圭子の自損行為と思ったのだ。だが、時間が経って読み直すと違うものが見えてくる。

 伯母が語る
「純ちゃんもがっかりしていた」
と言う嘆きに引っかかるものを感じたからだ。その言葉の向こうには「がっかり」して部屋を出ていく藤圭子のおよそ背中で泣いている姿しか見えてこないのだ。
 紙袋の3,000万円も「やっぱり返して」と取り戻された。これにも合わせて違和感を感じる。
 親孝行と出したお金を取り戻す。本当に親孝行のお金なら、使い方は母親の自由にすべきで、回収するのは「親孝行はやめた」ことになる、のではないか。

 ここからはぼくのいささか辛い推論になる。みんな黙っているだけで、わかっているのかもしれない。でもね、黙っているだけでは誰も浮かばれないよ。

 藤圭子の生活はJFK空港の現金没収(2006年3月)以来、宇多田氏の管理状態になっている、と読んでいる。まずお金だが、カジノの旅で、手切金とされる4億以上のお金の相当を使い切ってしまっていた。
「この一年でカジノで5億円は使ったわ。カジノは現金が当たり前、だから持って歩くのよ」
とJFK空港でのことを話している。有名になったキティちゃんのバックに詰まった約5,000万円は没収され、手持ちのお金はほぼ底を打ちそうな状態になっている。

 宇多田氏は(東芝EMIとの共同意思かもしれない)
「ギャンブル狂いの母親はヒカルによくない」
「ヒカルに害がこないよう、生活の面倒を見る」
 この現状を埋め合わせるためのあるプランが考え出された。それは二つの条件でできていた。
 生活費の手当と生活の見張りをセットであてがうというものだ。しかし、これは冷静に言えば世間からのもうひとつのフエンスが作られた、と言うのが正しいのだろう。

 ここでまた恨み節なのだが、歌わない限り藤圭子に自分で未来を開く力はない。しかし何より先に歌は
「ヒカルのために良くない」
と禁じられている。となると、藤圭子という人生は消え、だらだらと無表情で単調な生活が待ち構えていることになる。


 母親に会いにいく前年に驚いたことにJFK空港で没収された約5,000万円が還ってきた。これが母親の前に出した紙袋の中身の原資だと、ぼくは想像している。最後のまとまったお金(かもしれない)。少しキレイな言葉になりすぎるが、
「このお金で、いまのつまらない人生を変えよう」
と思ったとしたら当然のことだと思う。
 ところが藤圭子の、この人生の英断はもうひとつのフエンスに阻まれることになる。
 母親と暮らすこと、3,000万円を渡すこと、この二つをすぐに止めるよう指示が出た(のだと思う)。さあ、どこからだろうか。同居人兼見張り人からの報告を聞いた1週間後、宇多田氏からの言わばお咎めがやってきた、というのはどうだろう。

 その内容は、
(「母親と暮らすなら、もうお金の援助はできない」)
(「母親に3,000万円を渡すのも同じ事情で、援助はできない」)
というものとするとほぼ説明がつく。つくづくいやな話だが、どうしてもこのストーリーに行きついてしまう。

 宇多田氏は、藤圭子の一家がまとまるのを恐れていた。藤圭子は「ヒカルのためにならない」という言葉で押さえ込んでいるものの、視点を変えればそいつは勝手な言い草でただただ現状のヒカル利権を独占する思惑に過ぎないことが透けて見えてくる。

 だからこそこの勝手なサークルへ誰にも立ち入らせないようにすること。藤圭子の一家がそれぞれひとりであることが現状の、つまり宇多田氏の思い通りを通す良い方法なのだ。例えば、
「もう一度、藤圭子で歌えばいいよ。ぼくが先生に頼んでやるよ」
この一言が出るだけで迷惑なストーリーが動き出してしまうのだ。

 ではその「一人ぼっちにする意図」は、どう上手に実行されたのか。断片的だが、いくつかの言葉と事例を伝えておこう。
 兄の三郎さんは「家族をバラバラにされた」と繰り返し嘆いている。
「ヒカルさんは周囲に母と会うことを禁じられ、3年は会っていなかった」ようですとのスポーツ紙デスクの話しもある。
 母親の葬式に、藤圭子は出席しなかったし、ヒカルも
「小さい頃、育てもらったことをよく覚えています」というコメントはあるものの出席していない。
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