月見バーガーの、
話しをしよう。
この時期になると「またかー」と思うわけです。
「うれしくもあり、切なくもあり」
という気持ちですね。
月見バーガーのことです。これは、発展いちじるしい。
本家マックでは、月見バーガーにはじまり、月見パイが誕生し「月見グループ」という商品ゾーンができています。
さらにです、ケンタッキー、モス、吉野家まで「月見の世界」に仲間入り。
大きな世界になったなあ。遠く仰ぎ見るようです。
「オジサン、マックの人でもないのにどうしたの」
「えー、えー、そうだよ。でもオジサンは月見バーガーという名前を考えたんだよ」
「だからねぇ、こんなに大きくなっちゃって、感動してるのさ」
というわけでございます。
今から30数年前ですかね、だいぶ苦労して「月見バーガー」という名前を考えた。うーん、その時の話しをしましようか。
○
(まず、2024年の文章です。経緯がよーくわかります)
発名しました「月見バーガー」。というタイトルです。
発明じゃありません、発名の話です。業界用語でネーミングと申します。
「月見バーガー」という商品がありましてね。えー、マクドナルドです。かれこれ30年前からあります。いまとなると
「いい名前だなあ」
と思うでしょう。ところがこうなるまでが大変だった。時が育てるとも言えるんですね。
「ベーコンエッグ・バーガーをマックでも販売するんだけど、マックのオリジナルに仕立てたいので、いい名前がないかなあ」
という依頼がCM製作会社からありました。
「だってさあ、ベーコンエッグ・バーガーは中学生のお昼の定番で、他のバーガー屋でとっくに人気なんだよ」
「だからさあ、ベーコンエッグ・バーガーとドーンと距離を取れる、新しい名前にすれば大きく売れるんだ」
(という話しだが、実はここに答えはある)
話を聞くとだんだんネラ(狙いのこと)が読めてくる。
あーあー、それでもなお、だ。
CM製作会社に発注した電通のチーフCDが、ま、延々熱く語るのです。マックは、電通にとっても巨大クライアントなので
「ハッ、ハッ、ハー」
とみなひれ伏して聞くのですね。
後から聞くとそのチーフCDは電通の三悪と言われるくらい強引な人でウカウカしてられないんだそう。Iさんです。
「どーも違う世界じゃないかな、あの人は」
と言うと次の日から、「あの人」はいなくなるそうです。(あくまで噂です)
ぼくは書きはじめる。いくつもいくつもね。それで、三悪のチーフに見せるとこれが
「そーかあ、うーん、ま、いいのかなあ」
どうにも結論が出ない。
(その答えは、「新味なんだ」と焦点がついていたのは、ぼくだけでみんな焦点が定まっていない)
で、椎名町の通称・宇宙ステーションこと商品開発室に行くのですね。
シューン、ステンレスの自動ドアが開き、待っていたのは藤田完氏。伝説の創業者、藤田田氏の次男です。この人も強引。強引グ・マイウエイだ。やにはに、
「どれも何かが足りないんだ、わかるか、言ってみろ」
シーン。
(何もはじめっからそう飛ばさないで)
しょうがない、ここはぼくがなんとかするか。
「愛情ですね」とぼく。
「うまいこと逃げるな」と完氏。
(どうやら引いたぞ、先に進もうよ)
「ムムムッ…これだな感じるのは」
鉛筆で大きく書いた「月見バーガー」に行き当たった。
本当のところ、まわりの評判はあまり良くなかった。
広告業界は一応にモダニズムだからね、良いわけはない。
藤田完氏は長い間ロス暮らしで、音楽活動をやっていた。それで日本語にグッときたのでは、と製作会社のPは推測しておりました。だが、しかし、判断は当たっていた。「月見バーガー」はすっかり定番になったからね。
そこからはじまった「月見バーガー」ですが、この秋「月見ハンバーグ」と「月見パイ」と出揃い、「月見」と言う商品グループさえできそうじゃありませんか。特に「月見パイ」のパッケージなんて(画面からだが遠目でも)素晴らしい。
「うーむ、すごいなあ」
ぼくが開発したネーミングで市場に残っているものはいまやそう多くはなくて、しかもここまで大きくなるとは。
大したものだ。感動ですね。名付けた親から、我が子をほめたたえよう。
「30年続いたのだから、30倍のギャラを貰えばよかった」
などとまわりはカラカウわけですが、致し方なし。
「今も名前は生きている」で、よしとするかです。
○
(ごく最近の、AIとのやりとりです。もっともシンプルに開発時の苦労のすべてを伝えてくれます)
中学生人気のファーストキッチンのべーコンエッグバーガーを、マクドナルドの世界で再現すれば大きな成功が見込める。これが第一のテーマ。ぼくは、これだけをベースに思考をはじめます。
べーコンエッグバーガーに「新味」を与える、これが成功のポイントと当たりをつけました。たくさんの名前を作りましたが、あまりにも間口が広いわけで疲労困憊しました。行き当たったのが「月見」という新味です。
たくさんの中からロス帰りの藤田完氏は、日本語に強く反応したようです。とても強イング・マイウェイの人で対応するにも苦労したのですが、強イングさが成功に運んだ要因なことは大きいですね。もちろん田氏には一度もあっていません。
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