太多亮が辞任した。あえなくとも言えるし、潔くとも言える。さほどドラマもなく退任記者会見は、終わった。
フジ騒動の小さな区切り。ぼくは、フジの事件は太多亮が起こしたとクーデターだと思っている。
理由は?
それは「こんなにも汚い手を使うのはよくない」という正義感がはじまりだったと思っている。ぼくはいささか太多亮(と近いコース歩んでいて)、心理がわかるんだ。そうマチガイはないと思う。
2月23日「中居は中抜きしたか」の記述は、このスラスラと読める心理をもとに書いている。かなりキワドイところを攻めているつもりだが、そうマチガイないと思う気持ちはいまも変わらない。
1
「これは、絶対に外部にモラすな。モレたら大変なことになる」
「はい、了解しました。ですが、番組はどうしていきましょうか。判断を示しておかないと」
「N島、数字はどうなっている」
「10.5、出ています。継続の方向かと思います」
「……このままかぁ、そーか、このまま行こうかあ、太多ぁ」
「わっかりまーしたー。その構成でセットします」
「接点はいま面倒を見ている佐々木に継続させます。アナウンス室はここで全部、押さえます」
「中居の方は……」
「はい、わたしがこれまで通り連絡の役目をしていきます。なにも問題ないをベースにやって行きます」
2
「N島、本人とアナウンス室は佐々木に任せたし、医師も付いている。中居さんのここんとこのご機嫌はどうなんだ」
「太多さん、大丈夫です。わたしの方からは問題なく進んでいると伝えています。本人、けろっとしています」
「おいおい、こっちの身にもなれだよなあ。次の仕事(オリンピック)控えてるから仕方ないか。このまま行ってくれればよしとするか」
3
「佐々木さん、彼女、精神病棟に移ったそうですね、いまどんな様子なの」
「精神病棟に入ると、接触が難しくなります。いまご家族の方、妹さんでしょうか、面倒を見ていらしゃるようです。それ以上はわたしにはわかりません」
4
「えー、中居さん、本当ですか。メールが直接、入ったんですか。驚いたなあ」
「うーん、そうだよ。お金に困っているようだから、お見舞いでもとどけるベェか」
「わかりましたー。わたしの方でお金を用意して、向かいます。後で報告しまーす」
「ダメでした。受け取り拒否。バーン、なかなかの剣幕でした」
「女はなぁ、わかんねぇからなあ。N島さあ、少し上に相談して見てよ」
5
「社長、と言うようなわけで、中居さんの伝言でやってきました」
「……そうかあ、元気になってきたら大きな相談(お金)をさせてもらうんだなあ。それしかないか。準備、担当にさせておくから、中居さんには『安心です』と伝えておいてくれ、N島、うまくな」
6
「太多、お前なあ、明日から関西行ってくれや。役職は社長ということだ。頑張ってくれ。これは日枝さんもご存知のことで、なんとかさまざまな後片付けをはじめていこうということなんだ」
(そーか俺を含めて中居事件をすっぽり消してしまおうと言うことか)
「はい、わかりました」
「それにしましても、社長、中居さんの件、どこで収めるつもりでしょうか」
「うーん、大きな相談をさせてもらうと思っているんだけど、ここからは任せてくれや」
「ですが現場復帰の方向で進めないと……後々、問題が出ますよ」
「しかし、そりゃあ無理だろう、太多。
噛んだ犬と噛まれた人が、同じ小屋に住めると思うか」
7
「N島、二人のトラブルなんだから、中居さんの方から振り込むことになる。うちの方は、あの(オリンピック)契約金ということで進めていると伝えておいてくれ」
「わっかりました」
「中居さん、社長からです。すべて準備できました、そうです」
「N島、社長に返事しといて、お金のことワンちゃん弁護士に言っておくから大丈夫だよ。込みできた金額からあの件の分を割っておくよ」
○
中居騒動は、はじまりはクーデターだったというのがぼくの意見。そしてそのクーデターの主役は太多亮だった。
だが、クーデターは不発となって太多亮は退任した。
「自分は、彼女がスムースに現場復帰ができるようにレールを敷いた、そのつもりでした。そのまま行けば自然に現場復帰ができたはずなんだ。それが…」
現場復帰をさせることで隠蔽も意味がでる。
そうではない限りは、隠蔽工作の善意は消え失せて、ただただ悪意に変形していくのだろう。太多亮はいく分でも「善意の工作」を敷いたつもりだった。
「これでそのまま行けば自然に現場復帰ができる」
という意図は、太多が関西に移動になると、急激な化学変化のように仕切りはすっかり「悪意の工作」に変形していった。
どうにも我慢ができなかった。中でもその一番の確信は
「示談金の出所、分配だった」
太多亮はほとんどの流れを把握していたのだが、ひとつだけ「示談金」だけには関わっていなかった。
答えから言えば、
「示談金はフジから支払われ、半分を中居が割った」
と太多は把握したのだろう。
「ヒドすぎる」
そこに早く行き着くために、いち早く記者会見をした。しかし、女性が現場復帰ができていない限り太多亮は悪の一員でしかないことを、すぐに自覚した。
「そうかあ、ぼくもあいつらと同罪か」
ある意味、自分の人生の終わりのような感触がした。
「自分も悪なんだ」
という言葉がいつも連打した。
1回目の記者会見では
「重い事案だと思った」
という言葉でフジの工作の欺瞞を暴いた。
退任の記者会見では
「そのまま行けば自然に現場復帰ができたはずなんだ。それが…」
というのが精一杯だった。
良きつけ、悪しきにつけ、自分はもう主役ではないことを自覚させられた。カメラに向かって頭を下げようか、質問者に向かって下げようか迷ったが、前に向かい、いつもより長く頭を下げ後ろを向いた。
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