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2024年10月22日12:20

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人生は宴会だ。西田敏行

 画面に背中を向けて、上半身裸。丹前のもろ肌脱いで踊るおっさんありき。
 あっ、こっちを向いてニッコリしてる。
 ヨイヤサ、ヨイヤサ。

 釣りの打ち上げなのかいな。ぼた餅のような厚化粧。
 腰蓑つけたおっさんが、腰をふりふり踊っている。
 あ、ホレ、ホレホレホレ。
 ヘイ、ヘイ、ヘイ。

 上の画から50年、裸踊りはつながっている。
 西田敏行と実父の姿だ。お父さんの名は、今井泉。名前が違う、そのわけは、うーんあるんだなあ。

 NHKファミリーヒストリー。西田敏行は5歳で実母の姉夫婦に養子へ出た。
「これでもう会えなくなるのかなあ」
と母と離れた。父はもうその時には亡くなっていた。画面の中ではじめて見つけた、モロ肌脱いだ父の姿、
「見たことない実の父の実体が見えてきて、なにかこうよかったですね」
とひとつ安心したようにコメントしている。
「裸踊りのくだりは、わたしも『釣りバカ日誌』という映画を撮って、最初にアイデアとして、面白いことをやろうと言ったら、裸踊りだったんですね」と人生をなぞるように答えている。声が揺れている。

 そうだ、「人生は宴会なんだ」という西田敏行のポリシーの由来がほんのり明かされる。
(えーと本人は明かしていません。ぼくが少し人生を腑分けしているのです)

 5歳でもらわれた子は、いくら育ての親がやさしくしてくれても、どこかで淋しさを抱えている。言えないから辛いのか。じっとしていりゃあ淋しくなる。夜が暮れたら淋しくなる。

 だからなんだよね。さあ、宴会だ。

 ところが学校出立てのアルバイトの時給は95円、どうやって飲めばいいのか。宴会のはじまりは六本木だった。友達の店に、松崎しげると連れ立って押しかける。
「はい、どうも、皆様のリクエストにお答えします」
なんと毎夜の宴会芸の出前からはじまった。
「演歌・三題噺」
「西田プレスリー」
「ピエール与作」
当たり芸をあげればキリがない。

 そうして、売れてくれば今度は自分で宴会の場を作る側になる。セッセ、セッセと毎晩だ。震災の後からは、持ち歌にようやく故郷の「会津磐梯山」が入ってくる。母親と別れた日からずっと見上げてきた磐梯山だ。

 エイヤー
 会津磐梯山さんは 宝の山よ
 笹にこがねが エーマタ なりさがる

 西田敏行さん 朝宴会 夜宴会が大好きで
 それで 身上つぶしてないよーだ 

 西田敏行の芝居は
「あなたの淋しさをちょーだーい」
という淋しさの磁石のような構造だった。
 人の淋しさを吸着する芸だ。
 吸い込むと、きっと疲れるんだろうなあ。大変な仕事だった。「だったんだろうなあ」としか言いようがない。 
 
 人ってのは、ほとんどが淋しく生きている。
 西田敏行は、このホントを知っている人だったんだと思う。
「なあーに言っちゃってんの、遅かりし由良之助。
 5歳の時からわかっていたよ」
と内緒で答えてくれる。この切ない人生のホントを紛らわすのは、(笑わないでよ)宴会しかないんだよ。かつても、かっても、男はそうして生きてきたし、西田敏行もそうだった。それに、西田敏行の宴会好きは、人生のはじめあたりから決まっていた。みたいだねぇ。

 さようならはないけれど、お開きは(月のものじゃない)付き物で、そうして仲間は入れ替わり、宴会は続いていく。
「そうかあー」
「そうです」
「人生は宴会だ」、日本のマストロヤンニさん、大きなお開きです。
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