明石家さんまのお笑いについてのスジの良さの話をします。
「何をいまさら」とお思いでしょうが、あの〜松本人志ですね、彼とはお笑いの質の差があり、そいつは実のところ「お笑いの教養みたいなものだ」という実のある話です。少しためになる話のつもりです。
○
さんまが「なんば花月」の楽屋に入っていくと、ジミーちゃん、楽屋の隅でゴロンと横になって唸っています。
ウ〜ン、ウ〜ン。関西で言うモートル、モーター状態ですね。
「おい、やっとるか」
「やっとる、やっとる」
シコシコの手を止めずに声を出す、ジミーちゃん。
○
「これ、いけるでぇ」
ポッ、さんまの頭に100wの電球がついた。
「ジミーなあ、ギャグ教えたる。よぉ覚え」
「おい、やっとるか」
ワシが言うやろ、そしたら
「やっとる、やっとる」、言うんや。
けれどな、手な、ちんちんの前はアカンで、テレビではよう使えへん。
顔の前まで持ってくるんや。
これだけのことがジミーちゃんにはキツかった。
セリフは自前なので問題ないが、手がどうしてもちんちんの前に行ってしまう。好きな場所にいくんですね。
さんまは楽屋の出入りのたびに繰り返した。
「おい、やっとるか」
「やってる、やってる」
ジミーはなんとか立派なパブロフの犬になってきた。ワンワン、やってる、やってる。手は招き猫のように頭の上にきた。半年、かかった。
○
「おい、大西、楽屋の横山やすし師匠に出番や、言うてこい」
ジミーちゃん、やすし師匠に声をかけると
「じゃあ、ガンバレや」と横山やすし、立ち上がる。すると居合い抜きのように、
「お前もガンバレ」
性はパブロフ、名はジミー、構わずの抜き討ちだ。バサッ。
「お前、誰にもの言うとんじゃ」
横山やすしは流石に回転が早い、すかさず烈火の如く怒鳴り返す。
事件を知ったさんま、すっ飛んでくる。
「兄さん、すいまへん」
「こいつアホやから、ガンバレ聴いたら、すぐお前もガンバレ言うよう仕込んでますねん」
横山やすし、喜んだ。畳に座った足を宙に上げ「パン、パン、パン」と拍手した。いやあ、拍足かなあ。
○
ジミーはどこに行っても叱られる、そいつを受け流す手口はないか。
「受け流す、受け流す、受け流す、これやー」
「このアホが、何しとんねん、どつくぞ」
「ご機嫌、ナナメですねー」
両手を上げて、カラダをナナメにすると、怒りの弾丸はジミーの頭を直撃せず横に抜けていく。
○
ジミーちゃんの三大ギャグはこうして生まれた。
「やってる、やってる」
「お前もガンバレ」
「ご機嫌、ナナメですねー」
○
さんまがなぜエライかという話です。
お笑いの大元は反権力で、それも社会の最底辺からの逆襲がいちばん力のある笑いになる、まさにお笑いの教科書から生まれたような「ジミーちゃんの三大ギャグ」です。
中でも「お前もガンバレ」が、こりゃあすごいよ。
底辺から「お前」と声をかけられてうろたえる、怒る、偽の権力者。(たとえですよ、横山やすしさん)
観客(第三者)には、権力者が暴れれば暴れるほど「いかがわしさ」ぶりがありありと見えてくる、という構成。しかもジミーちゃんという素材があればこそのただならぬ破壊力です。
世の中のもっともらしい秩序がガタ、ガタ、ガタと壊れていくのです。
というわけで、さんまの「お笑いの教養」の高さに感心しきりです。
「笑いの哲学」を学ぶ本は数々あり、ベルグソンなどどれも難しい。さんまが本を読んだとは思えないがまさしく理に適った笑いの方法に拍手です。
でね、もはや余計な事だが、松本人志には「お笑いの教養」はなかったようだ。つまり人のレベルの差だったね。
もしかしたらコンプレックスが巨大だったのかなあ。
あれー「やってる、やってる」の聴き慣れない声が聞こえるけど誰かなあ、松本シコ志かなあ。何か間違えたかなあ。
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