○2009年10月26日の日記再掲載
「これだけは、おぼえていて欲しいよ
キスはキスでそのままだし
ため息はため息でそのままさ。
大事なことは 恋をしていたふたりがいたということ
そいつは 時がたっても 変わらないのさ」
10才位の時にはじめて見た、こんな曲が流れる映画が好きだった。以来ぼくはセンチメンタルが好きな男の子になっちゃった。センチメンタルはひどくなるとうつになる。こいつはサイクルみたいなもので仕方がないところがある。
越中のおじさんに言わせると
「おぼえているから情けなくなるんだ、忘れっちまえば、思いださない」となる。
「おじさんの言うこと理に適っているね」
「理屈じゃないぞ、これが男の道理。ドウリもドウリ、ドゥリームだ。
そいでな男は次々昨日のことは忘れて、いつも明日に向って撃てだ」
「うーん」
話はわかるが中々、承服できないことなんだ。
「マスターの言うことなんか、聴くことないよ。このおじさん、神経ないんだから」
ジュンがまぜっかえした。
「頭の中に線が2本しかないんだから。好き、嫌い、これで全部」
「毛はたくさんあるけどな」
おじさんはけろっとしている。
「お前な、いろんな事をおぼえているとお前らぐらいはいいが年とって大変だぞ、病気になるぞ。やもすると死にたくなるぞ。
だからな俺は、予防のために思い出したくないことは、ずっと忘れることにしてきた」
「このおじさんもね、中々大変だったみたいよ。お母さん、言ってたけど」
「女はみんな、男らしい男を悪く言う。ただし死ぬとほめる」
「生きているうちにできるだけ、ほめてあげますよ」
「そうすりゃ男は長生きする。利口な女は必ずそうする」
「ほめないと男は死ぬんですか」とぼく。
「あー、そうだ、犬と同じだからな男は」
(そーか、男は犬と同じか)
おじさんはこうして1分間に1発は警句を飛ばす。
きっとノーマン・メーラーの「1分間に1万語」はこういう親父から生まれたんだ。ぼくは変な感心をした。
ぼくは高校生たちを手放してというか、あいつらと一段落して少し淋しくなっていただけなんだ。せめて「1分間に2千語」くらい語れるようになるまでがんばろう、とビールを飲み干した。
○
「ピンボールの夢」という昔、書き始めていたファンタジー小説の79回目です。
ちょっと軽くていいところがあるので、掲載してみました。
場所は行きつけの「As time goes bar」というバー、となると頭の訳詞は
「As time goes by」となりますね。字幕を見ながらのぼくの訳です。文中のおじさんはマスターで越中ふんどしを常用しています。
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