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2024年01月23日00:51

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落語「上手い・下手論」��

落語「上手い・下手論」�◆〃芯未蠅量梢諭�型破りの名人。

○2008年12月11日の日記再掲載

 落語講座のつもりで、この際だからもう1、2度続けます。(この際というのがどの際だかよくわからないが、この際で)

 前回、話したのはいわば型通りの名人、上手の世界です。その中でよーくわかって欲しいのは、ぼくが言う「品がよい」というのは見た目じゃなく、まして言葉づかいではないということ。

 通の中の通好み、三笑亭可楽などはちょいと服装(なり)を落とせば横町の徘徊老人のような人でしたが、ぼくに言わせれば「名人の品」のよさがある人でした。

 では、どんな品のよさかと言えば、すっきりとしていて嘘のない噺をしている、そのたたずまいの品のよさです。これは、文章、芝居にも通じることでケレンがなく、作意が感じられない表現というものには、なんとも気高さみたいなものを人は感じるわけです。

 俗に言えば「嘘のないものの持つ気高さ、品のよさ」です。

(でね、これ、ここでわかってもらえたとするでしょう。けれどここを一歩離れたとするでしょう。するとすぐ「なんて服装(なり)のいい」とか「品のよさそうな」とか見てくれ志向がはじまっちゃうんだ。ま、仕方ないか、と)

 で、次に型破りの名人です。

 ときおり型破りが出てこないと、古典落語の世界は煮詰まっちゃうわけです。なにしろ江戸・明治の世界はもうないわけで、どんなに待ってもそこからは新ネタは永久に生まれないわけですから。
 
 いままでの約束事はないとこにして、とにかくおもしろい、客のこころをつかんで放さないという芸が必要なわけです。

 代表は、なんといっても林家三平(6年10/11日記)。この人ほど客をつかんで放さなかった落語家はいませんね。その上、やっちゃいけないということをほとんどやり尽した芸人はいませんでした。
 談志に言わせれば、「ハレンチな芸人」です。
 その代表が客いじり。
「あ、柳沢さん、お待ちしていました、三平です」
 客席に付いたばかりのお客さんがいると、高座から声をかけちゃうんですね。お客さん、その都度、全員、振りかえるからおかしかったね。

「や、や、山下圭っ太郎れす」兵隊落語の金語楼とか、
「我、たらちねの胎内より出いでし頃は、眉目秀麗なる男の子」では到底なかった三笑亭歌笑、
「それが、生姜湯の風呂でヒリヒリして」おばあちゃん落語の今輔、
「山の、あな、あな、穴〜」浪曲落語の歌奴(いまの円歌)とか、
「穴〜」と表に聞こえるほどの大声を出して平気だったのは歌奴(いまの円歌)だけじゃないかな。
「表を歩いているご婦人が思わず着物の前を押さえた」
と言うあり得ぬヨタが残っています。

 時代時代に、次々に「お化け」が出てきたんですが、いま、ここのところあとが続かなくなっているのかなあ。

 江戸から明治に移った時も、ステテコ踊りの園遊、釜堀りの談志、電気踊りの小南とヒキも切らなかった。この芸人たちは覚えていて欲しいね。覚えておけば、いつか何かの役に立ちません。いささか異端になるが明治には、魁傑亭ブラックと言う外人落語家もいたのです。(いまのブラックは元は談志の弟子で二代目です)

 で、現状です。

 ぼくは三遊亭円丈に期待していたんだけどね、どうも化けきれてないね。歌と踊りの素養がみんな足んないのじゃないかな。円丈もそうだけど、学卒芸人が多くて頭で考え過ぎるのかなあ。(と、言ってるうちに円丈のやつは火葬場で炎上しちまった。あー、残念だ)

 いずれにしろ、型破りの名人というのは、オリジンが(江戸・明治ではなく)自分自身だから一代芸で終わっちゃうというのが実に切ないところです。死ねば、パーなんだから。

 でね、型通りの名人、型破りの名人、どちらも大切でしてね、両者相まって寄席の世界をつくるのです。という答えを本日の下げとさせていただいて、おひらきにさせてもらいます。

 デ、デーン、デーン〜(ハネ太鼓です)

                 ○

 型通りの名人、型破りの名人と言う話でしたが、なんでこんな話をするかと言えば、贔屓のほうで古典派か新作派かどちらかに偏ると言う泣き所があります。
「際立ち」ってのがあってね、両方大事なんだ。
 意外なようだけど古典は新作の影響を受けて、知らぬ間に変わっていく。その良い例というのが談志の「芝浜」。型通りに収めることがどうしてもできなくて、談志が作り直した女房の口説き。新作風のリアルにしたわけだ。

「ねぇ、ねぇ、飲んじゃいなよ」
「…えーイイのかい。久々だぁ、ベロベロになっちゃうよ」
「イイのよ、イイよ、飲んじゃいなよ」
「お、おっ、…やめとこう、夢になっちまう」

 落語が、能や狂言のように型にハマり過ぎない表現であり続けることができるのは、この新旧の呼吸です。
 繰り返しになります。両者相まって寄席の世界をつくるのです。
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