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2023年08月30日07:41

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流星のひと。21 それでーは、お別れしまーしょー。

 タイトルは二葉あき子さんの「お別れルンバ」を使わさせていただきました、無許可使用です。悪ふざけではありません。後でつながります。

「先生、今日、お話があります」
(ぼくは、もう純ちゃんがなんの話がしたいかわかっていたよ。「そーか、そーか、ぜんぶ聴けばいいのか、そう思って純ちゃんを待っていたんだよ」)と石坂は言う。

「先生、あたし、事務所をやめようと思っています」
「そーかあ、それもいいだろう。いいよ、やめたら」

 その時の藤圭子の言葉を聴くと
「事務所も、あたしも、煮詰まっちゃって他に方法がなかったんだ」
と言っている。少しわかりやすくすると。
 事務所が煮詰まるとは、まず石坂は「命火」ですべての弾丸を撃ち尽くし、ガクッと膝を落としていた。とても次の詩が書けそうにもないんだね。拡大を続けてきた事務所もいささか経営に勢いをなくしていた。

 圭子は、自分探しをしたくなっていた。歌手になって少し変わってしまったかもしれない自分。それでいいのかな。人に慕われ、人に尽くす、中学の副委員長ような自分をもう一度取り戻したかった、(1週間寝込んで考えた)これが素直な気持ちだった。

「純ちゃん、次は決めているの」
「芸映プロがいいかと思っています」
 芸映プロとは、西城秀樹を筆頭にするポップス系に強いプロダクションだ。藤圭子の音楽志向から考えると近いのかもしれない。

「そーかー、うーん」
 石坂は、聴かされて少しうなってしまった。予想になかったのだ。そして、答えた。
「新栄ミュージックはどうだろう。あすこは演歌だし」

 新栄ミュージックは演歌の最大手プロダクション。元々は浅草で浪曲師の元締めをしていたのだが、初代西川社長が村田英雄と共に繁盛させ一大プロダクションを築き上げたものだ。事務所は六本木に移っていた。浪曲に近い事務所というのは、圭子もどこか縁を感じていたのかもしれない。規模は、石坂に言わせれば
「アリと象みたいなもので、業界での力もまるで違う」
となる。

「先生、わかりました。お願いします」
「西川社長に、ぼくから話しておくよ」
 西川社長とは、初代西川社長の息子さんで、朝刊太郎こと山田太郎(歌手)のことだった。

「新栄の頭は村田先生で、同じ演歌だけど、年も違うし男だしバッテイングしない。いいと思ったんだ」
と後付けのように著書で語るのだが、その中であまりに新栄を持ち上げるのが、「あれ、いつもの」というきな臭さを感じさせるのだが大丈夫だろうか。

 移籍話という厳しい話は見えないところで進んでいくのだが、(トコちゃんの家での洗濯で見せた)藤圭子の無防備な姿は相変わらず変わらない。

 野球の四番打者で話をしよう。四番打者は、ほぼマイナスのことなど考えません。自分が行けば、すべて問題は解消してしまう、と考えるのです。ここぞで、ホームランを打てばすべてよしと考える人、つまり無防備な思考の人になるのです。しかし、四番打者の知らぬまに、まわりにマイナスを支える人が働いて、はじめて思い切りバットを振れるのです。ここんとこが欠落します。

 演歌の四番打者、藤圭子はなんの守りもなく移籍するのです。
 自由で無防備な藤圭子は、本当に大丈夫かい。石坂の元を離れたうれしさは、ぼくも同じなんだが、まわりを一人でもいいから連れて出るというのはどうだったんだろう。ここまでのドタバタを考えれば、ぜんぶ真っ白が気持ち良かったのかな。

 さて、昭和のキャバレーのラストソングと言えばこの歌。
 それでーは、お別れしまーしょー。なんとも気持ちのいい、潔さです。
 これで、この時の気持ち良さを伝えたいなあ。できるかなあ。

(次回、許可なしの件でトラブルが発生します)
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