mixiユーザー(id:5708627)

2023年05月13日21:13

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あなたは「危険な関係のブルース」を聴いたことがありますか。

 あきれるほど直球のタイトルです。

 どうしてそんなに直球かと言えば、ぼくがこの曲を聴いたときの衝撃をそのまま伝えたかったから。あたらしくて、サスペンスで、何かこうカラダ中をウズウズさせて、聴いた途端にシューン、そのまま遠くの世界に連れて行ってしまうのです。

 タイトルは「危険な関係のブルース」、演奏はアート・ブレーキー(&ヒズ・ジャズメッセンジャーズ)。後にシネ・ジャズと言われるカテゴリーで、映画のサウンドにジャズを使うというはじめての冒険的な試み。

 冒険だから音のひと粒ひと粒がサスペンスで、ミントのように心を刺すのです。
(でももちろん、そんなことは後から知ること。では、何にひかれたのか)

 実は、この映画、横10メートルを超える大看板に描かれたヌードが東京中の評判になったフランス映画で、ぼくはこの大看板の前に立ちつくす少年だったのです。
(あー、この映画、みたいなあ)
 そう心の中で呟いていたのです。その中身は、
(この大きな女の人の裸はすごいなあ。スクリーンで見たらどうなっちゃうんだろう)となります。

 この映画、子供は入れない映画、だったのですが今度はぼくが冒険をします。トコトコトコ、テケツ(切符売り場)の後ろに回りドアを開けると支配人がいます。以前にも書いた、仲良しの蝶ネクタイのおじさんです。

 おずおずと頼み込むと、蝶ネクタイのおじさんはやや大きな声で笑いながら
「いいさ、ほら、ほら、ほら」
 ぼくのお尻をポンポンと押して、客席のほうに向かわせます。

 客席に入ると、あの看板の女性が(ジャンヌ・モローです)がこちらを向きぼくと目を合わすと、服を脱ぎはじめたのです。ドレスの肩に手をかけます。その画にかぶるように、追いかけるように音楽です。トランペットが突然の動悸のように走り出し、サックスが追いかける。(ほら、あんたの人生が壊れそうになっているよ)。
 タタタッタタターン、タッタッターン、、、タタタッタタターン、タッタッターン。
 すべてが止まります。あー、心臓は動いているなあ、けれど、それ以外、すべてが止まります。ぼくなんか、その瞬間から10年は成長が止まりました。

 少し前、NHKの「ラジオ深夜便」で突然、この曲が流れました。あっ、思わず小さく声がでました、深夜の暗いクルマの中で聴いたせいかもしれない。それにしても、ぼくはやはりあの日のように陶然とした。

 つまり、あの日から時は止まりっぱなしなんだ、あわてて腿に手を当てみるとやはりぼくは半ズボンだった。




◯安井かずみ作詞、沢田研二が歌う「危険なふたり」はここから生まれています。
◯「危険な関係のブルース」はその後、さかんに制作されたシネ・ジャズの最高峰だと思います。
◯マイルスの「死刑台のエレベーター」はスクリーンを見ながら即興演奏したことでも有名です。
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