責任者ッ出てこい!
(客席、ドッカーン。)
この絶叫がそのまんま芸だっていうんだから凄(すさ)まじい。
人生幸朗・生恵幸子の夫婦漫才。相方の生恵幸子も達者なんですが、人生幸朗の芸を超えた芸、人間そのものがおかしいのだからたまらない。眼鏡は絵に描いたような牛乳ビンの底、ド近目。なもんで人生、毎日が勘違いネタに困らない。
楽屋で寿司を食べはじめた「取れへーん、取れへーん」皿を突っついて人生師匠、怒ってる。
師匠、いけません、その海老、それ皿の絵です。これは有名な話。
楽屋イチのの悪ガキ、中田カウス。ナンバ花月のトイレのペーパーをすべて空にした。
そこに突進するように人生幸朗、バタンと飛び込む。
(アカン、人生の師匠や。これ、あやまってすむかいな)さしものの中田カウスうなった。
ガシャ、ガシャ、しばし音がして、人生幸朗、悠然と出て行った。入口で頭を下げようかと立っていたカウスが、まるで目に入らない。カウス、半分頭を下げながら師匠を見送る、あれ、よーく見ると片方の靴下をはいてなかった。
師匠、片足素足でそのまま舞台に行っちゃた。
さーて、ガラガラ声に、いかつい声。大きな態度で言いだすことは小さいおっさんの舞台がはじまります。
まぁみなさん、聞いてください。これ、私がボヤくのやのうて、今の世の中が私をボヤかしまんねん。
川は流れる 橋の下〜
なにかしとるねん。水が橋の上、流れとったら洪水やがな。
リンゴは何にも言わないけれど〜
あったり前じゃ、リンゴがもの言うたら果物屋のオッサン、ウルソウて眠れんわい。
女の春を返してくれ、と
早よ言わんかい、ワシがいつでも返したる。
(本気に顔真っ赤にして)
善良なお客さんを前にして、何という耳ざわりな歌を歌いよるんや。
(さあ、出るよあれが)
責任者ッ出てこい!
出てきたらどうすんねん。
あやまりゃ終(しま)いや。
ド阿呆!、泥亀!
生恵幸子の連発の叱咤で漫才はなおも続くのだが、特にこの「泥亀!」、客席の大時計がまるで見えないド近目、人生への1分前の合図だったという説は今もある。
(最後もスゴイ)
皆様のご健康とご発展とを、はるかメキシコの空より、心よりお祈り申し上げ、ボヤキ講座予定終了でございます。
このメキシコの分からなさときたらすごいよね。どうしてメキシコなんだ、客席全員ケムにまかれて、しばし呆然なのであります。
昭和の名人漫才師、人生幸朗なのですが大阪だけでなく東京でもひそかに人気があった大師匠でもあります。あの名人、桂文楽さえも人生が東京に来るたび褒めていたという噂も残っています。
人間自体が面白いという、お笑いの夢のような話でした。
(最後にぼくの大好きなネタ)
わたしバカよねぇ〜 おばかさんよねぇ〜
うーん、オノレを知っとる。
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