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2023年04月02日04:28

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フー子さんのこと。

 フー子さん、お元気ですか。ずいぶんあなたの歌声を聴いていません。
 とはいっても、ぼくはあなたのことは何も知らなくて、ただあなたの声だけをよーく知っています。元気でしたら、いまどんなお声ですか。あの響き、あの揺れは。

 遠い世界に 旅に出ようか
 それとも  赤い風船に乗って

 ぼくはフー子さんほど心に残る歌声を知らない。
 フー子さんは藤原秀子というのがホントの名前、どうしてフー子になったのか、それもまったく知らない。知っているのは、五つの赤い風船というフォーク・バンドのリードボーカルだったこと。

 歌い出すと、ハスキーで低い響きが広がっていく。響きがやがてあたりをすっかり満たしてしまう。チェロが奏でる通奏低音のようにね。空気の中をやさしい何かがほどよい濃さで広がると、会場の中に“世界”が生まれる。そうだフー子さんの声は“世界”を作り出す声だ。

 雲の上を  歩いてみようか
 太陽の光で にじを作った

 楽器で言えば、響きで世界を作り出すチェロなんだ。
 それもカザルスの「鳥の歌」のように聴く人をつつみこむやさしさの声。ぼくは言い過ぎていないと思う。

 五つの赤い風船は1967年に結成され1972年に解散した。ほぼ5年間、そう長い時間ではない。解散をすると結婚をされ、特別な時をのぞいて歌うことはなかったようです。ピークは2年少し、僕らが「遠い世界に」聴いたのは、ちょうどその頃。

 お空の風を もらって帰って
 暗い霧を  吹き飛ばしたい

(そうか解散か。あー、これでフー子さんの声を聴くことは無くなってしまうのだろう)ぼくはそう思った。ぼくは関東に住むわけで、関西の事情を知ることはできないし。
 けれど(もう一度、あの声を聴いてみたい)という思いは心のどこかにずーっと残っていた。30年以上もね。(あー、そう言えば、あの歌は)というように。
 ところが「花はどこへいったの」の歌詞を追っていると偶然だが出会ってしまった。2013年にフー子さんは難病で亡くなられていたのだ。

 ひとつの道を 力のかぎりに
 明日の世界を さがしに行こう

 あんなすばらい“世界”をぼくらはもう一度、聴くことがができないんだ。なかなか人生は苦い、遠い世界に旅に出ようか。


注1 文中、よく知らないのにニックネームを引用したこと、お詫びします。
注2 ここで試聴→https://www.youtube.com/watch?v=j9q9WUUFy48
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