『
シークレット・オブ・モンスター』
カッコいい!
スコット・ウォーカー(『ポーラX』)の紡ぐ鉄道の疾走音とリンクする不穏なスコアとスタイリッシュでどこかデカダンな芳香を放つ映像美から素直にそう感じた。
ジャン=ポール・サルトルの短編小説『一指導者の幼年時代』から着想を得たという俳優ブラディ・コーベットの本作が彼の長編監督デビュー作。
子育ての失敗が<負の連鎖>となって<モンスター>を生み出すという大枠はよく見られるパターン。
とりわけこの時代に設定を求めることでもないようにも思われるが、外では和平交渉している一家の内部はまさに戦争状態という皮肉が効いている。
冒頭で教会に向かって少年が小石を投げるシーンがある。
もちろんそれは罰せられるべきことだが、対比的に映し出される(戦争の)砲弾には罪はないのか。
ふとそんな素朴な疑問が浮かび上がる。
教会に石を投げる行為自体が宗教への不信の表れだろうし、なにより戦争こそ人間の愚かさの象徴なのだろう。
カメラがゆっくりジワリとパンしていくのもゾクゾクさせる。
ただ理解されない不遇な幼年期が人格形成に多大な影響を持つのは説得力があるが、そこから最後の人物像と結びつくには決定的な何かが欠如がしている気がする。
…が、そういう理論的なものは求めていないのではないか。
美学優先、映画というよりも交響曲に近い印象を強く持つ。
『アーティスト』のベレニス・ベジョや『ニンフォマニアック』で若きジョーを演じたステイシー・マーティン、名脇役リアム・カニンガムにロバート・パティンソンといった名だたるキャストにまじって主演の少年を演じるトム・スウィートのビョルン・アンドレセン(『ベニスに死す』)の妖艶さとダミアン(『オーメン』)の不気味さをブレンドしたような容貌が際立つ。
有楽町の街もすっかりクリスマス・モード。
だがしかし、ワタクシはそんなロマンチックな気分に浸ることなく、来年の運命をこれに賭ける!!
当たれーーーーー!!!
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