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2015年11月11日01:57

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『ボーダレス ぼくの船の国境線』

ボーダレス ぼくの船の国境線

 やり場のない憤りに胸が締め付けられる。
第27回東京国際映画祭(2014年)にて、『ゼロ地帯の子どもたち』という題で上映されていた。
とても評判がよく、アジアの未来部門で受賞したと記憶しているが、装いも新たに一般公開となった。(…が、各種の映画祭と重なって中々行けなかった。)

 イラン・イラクの国境付近にある廃船。
そこに出はいりして少年は魚を釣ったり、貝殻で装飾品を作ったりして生活費を稼ぐ。
しかし、穏やかだった生活に闖入者が現れる。
武装した闖入者は船内に境界線を引き始める…。

 優れた映画を生み出すイラン映画界から、またもや有望な監督が誕生した。
アミルホセイン・アスガリという名前は覚えておいても損はあるまい。
メタファー表現で知られるイラン映画らしく、これも寓話として描かれた物だろう。
どこにも行けないもどかしさを廃船で表現している。
具体的な人物背景や年齢などを意図的に外しているのもその意味か。
戦争が子供たちや弱者にどれほど苦渋を舐めさせているのかが痛いほど伝わる。
非戦闘員こそ一番の被害者になりうると警鐘を鳴らす。

 セリフをギリギリまでそぎ落として行動だけで語ろうとするスタンスも、主観より客観性を持たせているようで説得力がある。
主人公の少年を演じたのはプロではなく地元の子と聞くが、このリアリティはむしろプロ俳優では出せないのかもしれない。
ある種の疑似家族物ともいえるが、人類の未来は宗教や国境、人種、言語などを超えて行かねばならないという提言か。

フォト


 エンドロールが終わっても重苦しい余韻に席を立てない。
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