mixiユーザー(id:11939455)

2015年05月30日01:52

441 view

『JOE』

JOE

 キアヌ・リーヴスが『ジョン・ウィック』で復活を匂わせたようにニコラス・ケイジも復活か!?
近年は『リービング・ラスベガス』のオスカー受賞がウソのように、B級消耗品映画出演が続いていた印象だが、ようやく腰の入った作品と出会えたか?

 描かれるアメリカ南部の厳しい生活からは『ウィンターズ・ボーン』や『MUD』が想起される。
ともかくアメリカはだだっ広い国で、南部はいまだに北部とは違う文化圏を持っているようだ。

 そんな貧しい地域に暮らす15歳になるゲイリーの一家は典型的なプアホワイト。
呑んだくれてまともに働こうともしないロクでなしの父と、見て見ぬふりをする母、それに無口な妹と暮らす。

 前科者のジョー(ニコラス・ケイジ)は地主の下請で植林伐採に携わり、日雇いの黒人労働者を使うまとめ役。
そんな彼らを見て、一家の支えになればとジョーに仕事を頼むゲイリー。
熱心に働くゲイリーを見て、いつしか上下関係を超えて肉親のような存在となってゆく…。

 ゲイリーの父親は典型的なクズで、見ていてヘドが出そうになる。
演じる無名俳優は実に適役ともいえる。どこで見つけたのかと思ったら、本物の呑んだくれオヤジだったそうで(笑)、これが最初で最後の出演になったそうだ。(映画公開前、ホームレスのキャンプ場で死んでいたそうな…。こわっ)
少年ゲイリーを演じるのはやはり南部を舞台にした『MUD』でも才気を感じさせたタイ・シェリダン。

 話のタイプとしては珍しいものではないが、徹底的に南部の貧しさとリアルさを押し出す。
寂れた街の様子、まともな仕事もそうはなく、酒場か売春宿くらいしか憂さを晴らす場所がない地なのだ。

 至る所にメタファーを感じさせるのも特色の一つか。
犬のケンカ、無口な妹、樹木の生死…など。
面白かったのは、売れないからと言って勝手に樹木を伐採してはならないということ。
売り物になるのは適齢の樹木なのだが、手順が意味深。
クズ親父と息子ゲイリーの関係を投影して見たくなる。

 警官に都合のいい軽犯罪(些細な飲酒運転など)は取り締まっても、暴行や銃撃などの重要犯罪は満足に取り締まる気がないのではと思えるあたりは、この地が世の中から見放されていることを意味しているのか。
自分を抑えることができないゆえに前科者になり絶望的な地から抜け出せないジョーだからこそ若くひたむきなゲイリーに未来への希望を抱いたのだろう。

フォト


 大味の役が多かったニコラスの抑揚を押さえた渋い演技と南部の陰影と空気を捕えたカメラが良い。

(日本公開未定)
2 4

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する

<2015年05月>
     12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930
31      

最近の日記

もっと見る