『イニシエーション・ラブ』

『イニシエーション・ラブ』

　キャッチ・コピーは大切だ。「最後の5分全てが覆る。あなたは必ず2回観る。」が気になってしかたない。この手の映画はネタバレになると面白味がなくなるから…と思い劇場へ。

　予告の段階でも、これが普通の青春純愛映画じゃないというのは推測つく。
舞台は80年代後半、当時を知るものには懐かしく思うアイテムが盛りだくさん。
そして話自体もカセットテープを裏返すようにSide-AからSide-Bへと展開する…のだが、設定が少し都合良すぎじゃありませんか?（笑）

　“秘密”を語ってはいけないというお達し（？）なので地雷は踏まないようにするが、それにしても狭い世界によくもまぁ（笑）…とは思う。
ベースは乾くるみの同名ヒット小説で＜映像化不可能＞とまで言われたそう。
確かに小説なら成り立つかもしれないが映像作品となると、サイドチェンジに“ものすごく違和感”を覚える。
その瞬間、私の中ではラブロマンスでもミステリーでもなくコントになってしまった。

　舞台が80年代なのは、ノスタルジックさからではなく、携帯電話やインターネットがない時代じゃないと成立しえない話だからであろう。
それよりもSide-Aの重要キャストが公式サイトにも予告にもないのだが…？

　開始早々、前田敦子の黒い笑いからして妖しさプンプン…。（笑）
色々なアイテムに着目していると、それとなく＜仕掛け＞には気がついても不思議はない。
イニシエーションとは通過儀礼ということらしいが、誰にとっての通過儀礼なのかが見どころなのだろう。

　80年代、バブルの恋愛テクといえばホイチョイ。彼らの持つハウ・トゥものの胡散臭さがついて回る。
正直に言うと、Side-Bに入ってからが退屈で退屈で早く最後の5分にならないかと、そればかり考えていた。

　手品で感動するのはトリックの巧みさだけでなく、騙された爽快感を味わえた時じゃないか。
アイディアの表現には、それぞれ向き不向きがあるとしみじみ感じた。