『
マリー・アントワネットに別れをつげて』
「私は王妃が好き、王妃はポリニャック夫人が好き、しかしその夫人は高慢でいけ好かない。」
そこへ降ってわいた
エゲツない指令。
板ばさみになって悶々とする奇妙な三角関係が描かれる。
フランス革命蜂起から3日間の話で、革命が表舞台なら歴史の裏側といって良いのか。
シャンタル・トマ原作の映画化はこれまであまりスポットがあてられなかった舞台を描いていて興味深い。
王妃を主役にせず、朗読係シドニーという使用人目線で語ることは観客にとって感情移入しやすいだろう。
オマケに恋心を描くとなれば時空を超越した普遍のテーマ。
カメラの手ブレもキャラクターの心理描写に合わせてゆれる分かりやすさ。
ただシドニーが王妃に心酔する心理描写の薄さと、問題提起と結末がつながっていない脚本の弱さが致命的。
革命の一報を受けて、宮殿内の貴族たちが狼狽するシーンがあるが、その混乱振りが脚本にも現れていたように感じる。
高額なレンタル料のためブノワ・ジャコー監督に
<高級娼婦>と言わしめた本物のベルサイユ宮殿の輝きはさすがの一言。(ただ完全に当時の状態に戻してはいないようだ。)
一般には立ち入ることの出来ない裏側や当時の使用人の生活などは大変面白く拝見したが、風俗的側面以外ではレア・セドゥの憂いを含むなまめかしさ以外残るものがなかったと言わざるを得ない。
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