『
恋のロンドン狂騒曲』
シェイクスピアの一節から始まるウディ・アレンの新作は、邦題の通り英国が舞台の群像劇。一目見てアレン映画と分かる暖色系の色合いも健在。
自身の出演は今回もなく、『人生万歳!』や『ミッドナイト・イン・パリ』のように主人公がアレンの置き換えというほど色濃いキャストがない代わりにエッセンスは広く振りまいている印象を受ける。
手に負えない<玉突き恋愛の負の連鎖>をブラックジョークのように描けるのはアレンならではかも知れない。小さなほころびからドンドン輪が大きくなってゆく展開にただただ飲み込まれるばかり。
人物関係がこんがらがるが、基本はナオミ・ワッツとジョシュ・ブローリンの倦怠期夫婦と親のアンソニー・ホプキンスとジェマ・ジョーンズ夫妻の亀裂がメイン。
脇で顔をのぞかせるアントニオ・バンデラス含めそれぞれキャストが芸達者なので安心してアンサンブルを楽しめる。
とりわけ
アンソニー・ホプキンスにもっとも滑稽な役回りを振り当てるあたりがなんともいえぬオカシミを誘う。
ただ、過去の英国舞台のアレン作品と比べロケーションを生かした場面ほぼ見受けられない。
せいぜいロンドンタクシーが見られる程度なので、原題『You Will Meet a Tall Dark Stranger』を『恋のロンドン狂騒曲』と改題するあたりは苦心の末なのかもしれない。
(確かに原題のままでは何のことか分かりづらいだろう。)
「どんな奇麗事を並べても所詮人間の本心はこんなもの」…と、
ウディ・アレンのシニカルな人間観察眼のしたたかさが見て取れて興味深い一本。
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