mixiユーザー(id:949383)

2017年01月09日23:51

852 view

2016年に観た映画ベストテン

だいぶ遅くなってしまったけれど、2016年に観た映画ベストテン。
あらかじめお断りしておくと、”2016年に日本初公開”されたものに限らず、
その前年(2015年公開)と、もっと以前のものも混じっています。
だから通常のベストテンの参考にはならないでしょう。

現在はその都度ロードショーを見に行くような映画鑑賞スタイルではなく、
よほど興味があるものを名画座で拾うのが主体なので、
公開から半年以上は経ってしまうのです。(多少例外もあり)
でも私にとってはまぎれもなく”2016年にスクリーンで観た”もの。
かなり古い映画もありますが、あくまでスクリーン初見の作品です。

それにしても観る本数が少なくなってしまったなあ。
マリオン・コティヤールがマクベス夫人を演じた『マクベス』を見逃したのは残念。
この先機会があれば是非観なくては。

洋画)
1. リリーのすべて
http://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=354826
自分の内なる女に目覚め、ただひたすらに女性になろうとする
アイナー(=リリー)を演じるエディ・レッドメインが圧倒的。
スキャンダラスな描き方ではなく、あくまで繊細に慎ましやかに、
彼(彼女)の気持ちに沿ったつくりは皮膚感覚で身につまされる。
妻ゲルダ役アリシア・ヴィカンダーも好演。
(初恋の相手ハンスは良いひとだけど髪型のせいかプーチンに見えてしまう)

2. キャロル
http://carol-movie.com/
美しく哀しいセレブ妻とチャーミングな貧乏アート系娘。
二人の女の惹かれ合う気持ちが実に自然で、どっぷり感情移入。
50年代ニューヨークを彩る衣装も素敵でうっとり。
ケイト・ブランシェットは眞正の”ハンサム・ウーマン”で、
気骨あふれるカッコよさ。誰よりも凛々しくて痺れる。
ルーニー・マーラの揺れ動き変化してゆく姿も素晴らしかった。

3. アクトレス〜女たちの舞台〜
http://actress-movie.com/
大女優としてのオーラを放つチャーミングなジュリエット・ビノシュ、
有能ながら苦労も多い、彼女のマネージャー役クリステン・スチュワート、
怖いもの知らずの新人女優役クロエ・グレース・モレッツという
三人の女優の丁々発止のやりとりもたいへん見応えがあったけれど、
底知れぬスケールの大きさを感じさせるのは、後半の舞台となるスイスの山の風景。
芸能界が舞台の第一部と、山が主体の第二部では、大女優マリアも別人のよう。
人間の小ささを思わせる、天空に近い別世界。雄大で神話的な後味だった。

4. 黒衣の刺客
http://kokui-movie.com/
何よりも画面の美しさに目を奪われる。
衣装など色の鮮やかさ、山々の風景の荘厳さは神話的。
複雑な人物関係をあらかじめ承知していないと
物語はいまひとつ分かりにくかったけれど、
そういえばホウ・シャオシェン監督は昔から
説明的な台詞など入れず、情景で語るひとだった。
主演のスー・チーもチャン・チェンも美しくて満足。
(妻夫木くんはどこに出てるのかあまり分からなかった)

5. あの頃、エッフェル塔の下で
http://www.cetera.co.jp/eiffel/
この邦題からは、パリのお洒落な恋人たちの姿を想像していたのだが、
冒頭、パスポートの偽造疑惑で足止めをくらう主人公の姿から、
これはだいぶ違う匂いがするぞ、と引き込まれた。
(壮年の主人公を演じるのは「毛皮のヴィーナス」のマチュー・アマルリック!)
若き日の、ソ連への旅の緊迫感。民族的な状況もさりげなく描かれている。
田舎町の閉塞感。故郷に残った恋人へ毎日書き綴る手紙のもどかしさ。
主人公ポールの煮え切らなさは、とてもフランス映画的で懐かしい。
若き日のポールも少女エステルもとても瑞々しくて素敵だった。

6. 黄金のアデーレ
http://golden.gaga.ne.jp/
ドイツ軍に強奪された名画が、モデルの姪による返還請求により、
困難を乗り越えてその手元に戻される実話。
誰もが知る名画にこんな逸話があったとは知らなかった。
とにかくヘレン・ミレン演じる老婦人マリアの凛とした美しさに圧倒され、
ユダヤ人である彼女の、若き日の緊迫した体験に固唾を吞んだ。
彼女を助ける若い弁護士が、苦労しながら成長してゆく姿も良い。

7. 暗殺の森
http://mermaidfilms.co.jp/Ilconformista/
1970年作品のデジタル。リマスター版。
「暗殺のオペラ」の方は過去に観たことがあったけれど、こちらは未見だった。
ベルトリッチらしいスタイリッシュで冷ややかなな光と影の世界。
”優柔不断なファシスト”マルチェロの苦悩も、
ドミニク・サンダ演じるマリアのナイフのような美しさも良かったが、
婚約者ジュリアの肉感的(やや痴呆的)な存在も不思議に印象的。

8. ラスト・エンペラー
http://eiga.com/movie/31401/
有名な作品ながら、何故か映画館で観る機会を逸していた。
改めて観て、壮大なスケールに圧倒されつつも、
西洋人の描く東洋のエキゾチシズムに、日本人としての違和感もあり。
特に満州国や文革のくだりは、
すでにさまざまな描かれ方の作品を見てもいるので複雑。
それにしてもなんという可哀想な人生だろう、溥儀。
演じるジョン・ローンはとても美しかった。
最期のコオロギのエピソードは、いかにも監督好み。

9. ミケランジェロ・プロジェクト 
http://miche-project.com/
第二次大戦中、ドイツ軍に強奪された美術品を救出ために結成された
特別部隊「モニュメンツ・メン」の、実話を基にした物語。
原題はそのまま「The Monuments Men」。
圧倒的な暴力の前の美術品がいかに儚いものか、胸が痛む。
作者の魂をこめたような尊い作品が、権力者の意のままにされる理不尽。
ドキュメントタッチではなく、適度にエンターテインメントしていて楽しめたが、
あ、このひと「ダウントン・アビー」のご主人だ、とか、
ケイト・ブランシェット出てたのか、とか、
つい反応してドラマへの集中が削がれてしまった。

10. 奇跡がくれた数式
http://kiseki-sushiki.jp/
ラマヌジャンには興味があって、この作品の公開は楽しみにしていたのだが、
彼がどんなに凄いのか、哀しいかな数学者ならぬ一般人には分からない。
数学が表せない以上、映画は人種差別の不当と
故郷の妻への想いに力点を置くが、
結局、ラマヌジャン可哀想、奥さん可哀想、
イギリス人傲慢!という感想になってしまう。
まばゆいばかりのインドの色彩と、
陰鬱な空と石造りのイギリスの風景の対比は印象的。
バートランド・ラッセルが思いのほか良い役どころだった。

邦画)
1. リップヴァンウィンクルの花嫁
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1952097138&owner_id=949383

2. この世界の片隅に
http://konosekai.jp/
本当に隅々まで丁寧に作られた瞠目すべき作品。
片淵監督の手腕は前作「マイマイ新子と千年の王国」でも感服していたが、
戦時下の庶民の日常を淡々とリアルに描いているだけではなく、
時に賢治童話のようなファンタジックな味わいもあり、
思いがけず荒々しい実験的な手法も見える。
ヒロインの声を演じたのんさん、素晴らしいはまり役。

3. 海よりもまだ深く
http://gaga.ne.jp/umiyorimo/
『歩いても 歩いても』『ゴーイングマイホーム』に続く良多もの。
阿部寛の良多は常に冴えない役どころだけれど、今作ではことにかっこ悪い。
でも男ってしょうがないな、とくすっと笑いながら受け入れてしまう。
どこか可愛げもあって憎み切れないのだ。
是枝監督が実際に昔育った団地で撮影されているだけに、
樹木希林演じる母親のエピソードも、監督のお母様が投影されているそうだが、
私自身も自分の母親をどうしようもなく思い出し、何度も目頭が熱くなった。
母親って駄目な子でも、ただただ無償で愛してくれるものなのだなあと思う。
いつもながらどの役も適材適所で気持ち良い。
良多の息子役・吉澤太陽くんはとてもきれいな眼をしていて良かった。

4. シン・ゴジラ
http://www.shin-godzilla.jp/
無駄と思えるようなものが一切なく、
スピーディにテンポよく展開するのが小気味よい。
ゴジラ第一作における、災厄と犠牲の象徴としての姿に立ち返ったような存在感。
造り手の本気と初代作品への敬意を感じて好ましかった。
政府の右往左往のリアリティも徹底していて興味深かったのだが、
ゴジラに次々破壊されてゆく街の場所が、殆ど見知ったところで、
街歩きフィールドワーカーとしては、実にわくわくしてしまった。
この作品に関わった人たちも、皆わくわくしただろうなと思う。

5. 聖の青春
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1957040694&owner_id=949383

6. オーバー・フェンス
http://overfence-movie.jp/
『海炭市叙景』『そこのみにて光輝く』に続く、佐藤泰志原作の函館もの三作目。
この原作者独特のひりひりした痛みや危うさはやはり感じられるものの、
どこかふわっと柔らかく、最後に希望が感じられたのは、
主役のオダギリジョーの醸し出す雰囲気に負うところが大きかったと思う。
この作品の空は青いのだ。
蒼井優の熱演にも圧倒されたが、満島真之介の自閉的演技もすごくて、
しばらく誰だかわからないくらいだった。

7. の・ようなもの のようなもの
http://no-younamono.jp/
森田監督の『の・ようなもの』はもちろんリアルタイムで観ている。
今回の作品はその35年後の後日譚という設定。
私の馴染みの谷中を舞台に良い塩梅の佳品となっているけれど、
やっぱりあの粗削りなようで不思議な風格を持ったオリジナルの方が好きだな。
それはともかく松ケンはほんとに上手い。落語も軽々とこなしている。
そして何より尾藤イサオの変わらなさに驚愕!
エンディングの『シー・ユー・アゲイン 雰囲気』はオリジナルと同じだが
尾藤さんの声で歌ってこその名曲。

8. 湯を沸かすほどの熱い愛
http://atsui-ai.com/
役者さんは皆悪くないのだけど、「泣ける感動作」という惹句には引いてしまう。
やわな人間だから、杉咲花演じる娘・安澄が学校で受けるイジメに参ってしまい、
それに立ち向かわせようとする母親の強さにどうしてもついてゆけないのだ。
この母の行動に共感出来ないのでは、観ていてつらい。
それにしても宮沢りえがこういう肝っ玉母さんを演じるようになるとは。
オダギリジョーのふわっとした存在感はこの作品の救い。
銭湯内部は今は無き文京区「月の湯」。この名銭湯へのレクイエムとして観た。

9. 蜜のあわれ
http://mitsunoaware.com/
室生犀星の原作の、型破りで不思議な魅力を知っているだけに、
これはやはり映像化は無理だなと痛感。
二階堂ふみのひらひら金魚・赤井赤子はぴったりで素敵だけれど、
良くも悪くもただそれだけで、映画としては間が持たない。
鈴木清順監督作品「ツィゴイネルワイゼン」くらいやってもらわなくては。
幽霊の真木よう子はミスキャストだと思う。全然らしくない。

10. スラバヤ殿下(1955年)
http://www.nikkatsu.com/movie/20021.html
http://eiga.com/movie/41467/
今を去ること60年ほど前の作品だけど、初見。本来は別枠にすべきかも。
他愛無く馬鹿馬鹿しいようなお話だけど、
とにかく森繁久彌の縦横無尽の活躍に圧倒される。
すごいエネルギーとパワーだなあ。
放射能の扱いや、労働組合のストライキの描写など、やはり時代を感じた。


0 0

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する

<2017年01月>
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
293031    

最近の日記

もっと見る