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2016年11月27日11:45

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映画「聖の青春」

http://satoshi-movie.jp/
11月23日、渋谷シネパレスにて鑑賞。

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村山「羽生さんの見ている海は、他の人と違う」
羽生「…怖くなるときがあるんです。
深く潜りすぎて、そのうち戻ってこられなくなるんじゃないかって」
村山「……」
羽生「…でも、村山さんとなら、行けるかもしれない」
村山「そこはどんな景色なんでしょうね」
羽生「いつか一緒に行きましょう。そこまで」
村山「はい」
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個人的に一番印象に残ったところ。
静かなやりとりながら、ぐっと心を掴まれる、忘れられないやりとり。
この場面は予告篇にも入っていて、
原作本が平積みになっている大きな書店でも繰り返し流れているが、
正直、露出しすぎるのは勿体ないような良い会話。
関係ないけれど、”海””潜る””そこはどんな景色””いつか一緒に”という言葉から、
主役が松山ケンイチだけに大河『平清盛』を連想してしまい、
余計に感情が揺すぶられたということもある。

つい先日数学者ラマヌジャンの映画を観た時も感じたけれど、
「天才」の圧倒的な孤独と悲哀をひしひしと感じた。
他の人とレベルが違いすぎて、視座がまったく異なるのだもの。
頭の中を一から説明する術はない。病の苦しさも同様だ。
だからこそ、あたりを払うような天才棋士・羽生に圧倒され、憧憬する。
最初の対局のあと、帰途につく羽生を見かけて、
思わずあとをつけていってしまうところなど、
見方によってはストーカーまがいなのだけれど、
好きな女の子を目が追ってしまうような純情一途だとよく分かる。
いつも恬淡とした羽生の態度にもほっとした。

松山ケンイチには絶対の信頼感があるので、
彼が体重を増やし、気持ちを作り込み、
破天荒な無頼派のようにも見えるけれど、
無垢な童子のようでもある村山聖となるのに何の不安もなかったが、
(15年前のTVドラマでの藤原竜也はやはり綺麗過ぎた)
東出昌大の羽生も予想以上に良くて感心した。
聞けば彼も将棋好きで、羽生さんは敬意の的だけに、研究を重ねたとか。
対局の際、眼鏡に手を当てる様子や、
ぎろっと下からしゃくるように睨む”羽生睨み”など、
よく雰囲気を掴んでいたと思う。
シャープな印象の東出@羽生に対し、
山のような存在感でどっしり構える松山@村山は好対照。

それにしても対局の凄まじいほどの迫力には圧倒された。
あのちいさな盤のうえが全世界。
お互いの剣の切っ先を突き付けて切り結んでいる剣士と同じ。
盤の上に覆いかぶさるように身体を揺すり、
両手を畳について四つん這いに近くなると獣のようでもあり、
まさに命がけのやりとりなのだと納得させられる。
以前、テレビマンユニオンにも所属していた森義隆監督の演出は、
がっちりとドキュメンタリー的で手堅い。
真剣勝負の攻防を息を詰めて見つめた。

原作を読むと、周りの棋士たちの何人かは、
映画では多少アレンジされ、名前や設定も少し変わっているけれど、
結果的に棋士をあきらめる後輩の江川(実際には先輩の加藤昌彦)役、
染谷将太も印象的でとても良かった。
師匠森役のリリー・フランキー、橘(実際には滝)役の安田顕、
荒崎(実際には先崎)役の柄本時生など、皆味のある好演。
時生くんは若いのにオッサン的な役がすごくはまっていた。
しかし何より吃驚したのは原作者大崎善生をモデルとした編集長橋口役。
筒井道隆だと最後まで分からないまま見ていた。
彼もこういうオジサンを演じられるようになったんですねぇ。

偶然ながら、観終わって帰宅してテレビをつけたら、
ちょうどNHK総合の「にっぽん紀行」で、
東出くんが村山の軌跡をたどる旅のレポートをしていて、あわてて録画した。
映画で見て来たばかりの村山の元アパート外観、将棋会館、
定食屋などが現実のものとしてそこにあるのを、
直接には知らないのに懐かしく眺める、不思議な追体験だった。

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