mixiユーザー(id:5087127)

2016年03月30日01:04

323 view

新譜之雑談帖(その275)―『人間の声の栄光』・フローレンス・フォスター・ジェンキンス

フローレンス・フォスター・ジェンキンス女史、と言えば史上尤も有名な素人歌手にして、稀代の音痴として昔から有名であります。わたくしこの歌手(?)の事は知っておりましたし、その凄まじい歌唱力(?)を遺憾なく発揮した録音を集めたCDも所有して居りますが、この度映画化されたそうでして、そのリパッケージ版のCDが再発されるそうです。主演がメリル・ストリーブだ、との事である意味本気の映画化の様で。

何しろ音程が外れっぱなし、と云う本来なら録音が残る筈が無かったのに、それが御金持だったと云う事で、先日他界したマーラーの『復活』だけの指揮者ギルバート・キャプランの先達、と言えるかも知れません。

その生涯の最後に、ジェンキンス女史はカーネギー・ホールでリサイタルを催したそうですが、切符は何週間も前から売り切れだったとの事。それはそれで結構なのですが(実はそうでもない)、その日が1944年10月25日であった事を知ると、些か複雑な思いも。と申しますのはこの日フィリピン沖では、レイテ沖海戦の真っただ中。先達て70年ぶりに船体が発見された、帝国海軍の誇る戦艦武蔵を始めとし、多くの連合艦隊の軍艦が沈没し、多くの人命が失われた激烈な戦闘の真っ最中、地球の反対側では史上空前の音痴歌手のリサイタルが催されていたと云う事に。

歴史の皮肉、と申しますか、掛かる国と戦争したって勝てる道理はないよなあ、と変に納得して仕舞う、と申しますか。

併しこの映画、日本でも公開されるんですかねえ。公開されるなら、観に行ってみたいと思いますが……


0 0

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する