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2016年03月18日20:37

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新譜之雑談帖(その273)―ウィレム・メンゲルベルク・コレクション(42CD)

メンゲルベルク、と云う指揮者の名前はわたくしの様な、因循姑息にしてヒストリカル録音愛好家にとっては御馴染みの指揮者の一人、ではありますが。第二次世界大戦後、ナチス・ドイツに協力的だったと云う事で祖国阿蘭陀を追われ、追放期間(最初の10年から5年に短縮されたのでありますが)がもう少しで明ける、と云う時に没して仕舞ったので、戦後の録音が全く無い指揮者。
と云う訳でその録音は、戦前のSPか、戦争中の実況録音(アセテート録音と伝わって居ります)でありますが、チャイコフスキーの『悲愴交響曲』であるとか、バッハの『マタイ受難曲』は70年以上も前の録音であるにも関らず、依然として名盤の誉れを失っていない様であります。

わたくしは実を申しますと、メンゲルベルクのある意味、楽譜なんぞの改変は平気の平左・お茶の子さいさい、と云ったデフォルメの強い演奏は割に好きでありまして。昔のSPレコードの復刻盤であるとか、アセテート録音の実況録音盤(大概が演奏前に指揮棒で譜面台を叩く、カカッという音が入っているのが御愛嬌)を結構蔵して居ります。主だった録音はSP録音がテレフンケン(後世のテルデック)、実況録音が旧フィリップス(現在はデッカ)から発売されたのですが、今から10〜15年ほど前(と記憶しますが)色々なヒストリカル・レーベルからぼこぼこ発売された事がありまして。

わたくしが記憶する限りでも、ターラ、オーディオファイル、ミュージック&アーツ、その他余り聞いた事のない様なレーベルからもあれこれ出ていた、と思います。わたくしが購入した事があるのは、ターラとオーディオファイルから出ていた録音数点、そして「メンゲルベルク・エディション」と題するシリーズの中の一枚、ベートーヴェンの第九(1938年実況)。この第九は、途中原盤の傷があると見え、バリバリ雑音が入ったり、チリチリ云う所謂サーフェス・ノイズも盛大に聴こえて来る、問題有の代物なのですが、録音状態自体は時代を考えると驚異的な音質。

しかしそんな代物を嬉しがって聴くのは、わたくしの様な者だけだろう、と思いきや、例によって例の如く、ヴェニアスが驚いた事にメンゲルベルクの録音集成(全42CD)を発売する、との告知を出して来ました。おお、全くなんてこったい(驚きの余り卒倒寸前)。

ううむ、それにしても良くメンゲルベルクの録音を出そう、と企画したなあ、と思いつつ収録曲目を眺めてみると、何かの形で一度は世に出た実況録音は粗方収録している様で。ううむ、なんてこったい(驚きその2)。
更にテレフンケン録音、そして更に驚いた事に、合併前の旧ニューヨーク・フィルを指揮しての録音迄(有名なベートーヴェンの第一交響曲・第三交響曲『英雄』も含めて)収録している、のでありますね。収録曲目を見て、ちょっと唸らされました。

しかしこれに手を出すと、旧フィリップスから出たベートーヴェンの交響曲全集、マタイ受難曲、テレフンケンの一連の録音等が悉くダブる、のでありますね(既に購入前提であるのが、我ながら病気)。CD42枚、と云うと最近ではRCAのモントゥーの録音集成(40CD)を上回る枚数。ううむ、一挙にメンゲルベルクの録音が揃うのは大いに魅力的、ではありますがちょっとなあ……

他の新譜の告知を眺めつつ、横目でちらちら眺める日々が続きそうな予感。しかし、これ迄戦後派の演奏の集成だけだったのに、此処に来てSP録音時代の演奏家迄出してくるとは、油断がなりませんね。これでワインガルトナーとかストコフスキーのフィラデルフィア時代の録音なんかかまされた日には、悶々とする日々を送らされる事になって、のたうちまわりそうな。そうでなくても、近々レオ・ボルヒャルトの録音も出るらしい、なんてニュースも伝わって来て、わたくしとしては悶絶寸前なのに(大袈裟)
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