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2015年12月15日22:15

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松前藩と時代小説-宇江佐真理(1)

北海道にあった(正確には「蝦夷地に隣接していた」)松前藩について書かれた小説というのは、それほど多くないのではないかと思う。
その中で代表的なのは「クナシリ・メナシ戦争」を題材とした船戸与一の『蝦夷地別件』(新潮文庫ほか)ということになるだろう。あるいは、佐々木譲の『榎本武揚』は、幕末の「箱館戦争」を舞台とした傑作と言えるかも知れない。
この「クナシリ・メナシ戦争」と「箱館戦争」は、北海道(蝦夷地)の歴史の中で「物語」となり得る大きなトピックであった。
米が獲れず、それゆえに石高を持たないという特殊な藩である松前藩について取り上げる作家は、それほど多くはない。

そうした中で、宇江佐真理は特異な存在だったかも知れない。自身が函館在住ということもあって、松前藩を舞台とした時代劇を何作か書いている。そのうち、読んでみようと思いつつも、なかなか手に出せないでいた。そうしたところ、その宇江佐真理の訃報に接した。乳がんで、享年66歳とのこと。残念だ。

そんなこともあって、いよいよ宇江佐真理の作品を読んでみることにした。
幸い、古本屋でも簡単に手に入る。人気作家なのだ。

最初に読んでみたのは『桜花(さくら)を見た』(文春文庫)に収録されている「夷酋列像」。
『夷酋列像』という絵を書いた松前藩の老中であり漢詩人であり画家である蠣崎波響の人物像を描いたものだ。

「夷酋列像」は、「クナシリ・メナシ戦争」(物語の中では「いわゆる「寛政蝦夷騒動」」)が鎮圧された後、アイヌ側の降伏(鎮圧)に協力的であったアイヌの酋長たちを松前藩の側で製作した肖像集である。その芸術性の高さと特異性で注目されており、北海道博物館(旧称:北海道開拓記念館)の「開館記念特別展」のテーマとしても選ばれた。

宇江佐真理の「夷酋列像」は、「寛政蝦夷騒動」のような事件には踏み込まず、その作者である蠣崎波響の生涯の方に多くの筆を費やしている。

「夷酋列像」を読み終えて、次は同じく宇江佐真理が最上得内「シクシピリカ」を読んでいる。

そして、蠣崎波響についての史実を知りたいと思い、中村真一郎『蠣崎波響の生涯』(新潮社)を読んでいる。

それぞれについての感想なども、いずれ記してみたい。

■「函館から紡ぎだされる今を生きる時代小説」(作家 宇江佐真理さん)
http://www.hokkaido-jin.jp/issue/int/005_01.html
■作家の宇江佐真理さん死去 「髪結い伊三次捕物余話」(朝日)
http://www.asahi.com/articles/ASHC76GKCHC7UCLV008.html
■北海道博物館開館記念特別展「夷酋列像 蝦夷地イメージをめぐる人・物・世界」
http://www.hm.pref.hokkaido.lg.jp/post/exhibition/special/detail1737/
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