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2015年12月15日23:59

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新・音盤雑談帖(その32)―シュヴァルツコップ・クリスマス・アルバム

以前この日記でも取り上げました、シュワルツコップのクリスマス・ソング集。わたくしは度々記して居ります様に、歌手一人の録音を収めた歌物は、大昔の歌手の録音を除くと(ついうっかりカ―ルソーの大全集、なんてものを購入してみたり、漱石もロンドンで聴いた、アデリーナ・パティの全録音集を買ってみたり、ネリー・メルヴァの録音に手を出したり、と凡そ病気としか自分でも思えない偏りぶり)、殆ど手を出さない(言葉が解らない、と云うのが最大の理由)のですが。
この一枚は果たして不世出の大歌手(と言っても良いでしょう)シュワルツコップが、クリスマス・ソングの有名所の曲をどう捌いているか、を耳で確かめる事の出来る一枚。単独で発売される、と聞いてこれは買わなければなるまいと思っていましたが、先日漸く購入の機会に恵まれました。

日本の懐メロや流行歌、童謡を、日本人オペラ歌手が歌ったものはテレビ等で時々流れます。そうした物を聴くと、デコレーション過剰だなあ(主として編曲の面で)と思ったり、そんなに大仰に歌わなくても、と思うのが常なのですが、果たしてシュワルツコップの歌唱や如何に。

わたくしの感想を申しますと、矢張りそうした傾向は否めないものがありました。まあ天下の大歌手からしますと、凡人が教会で歌う讃美歌の類は、余りに造作も無く歌えてしまうものでありましょう。どうしても立派になり過ぎ、と云う感が。ある意味、オーマンディやカラヤンが割に良く録音した、クラシックのジャンル内でのポピュラー・コンサート、或いは管弦楽小品集と相通じるものがあるのでないか、と。

併し、実は一番魂消たのは、『聖しこの夜』でありまして。何が魂消たか、と言って、この曲マルチ録音の手法をとって、高音部と低音部の両方をシュワルツコップが歌っているのでありますね。即ち、現実には絶対聴く事の出来ない、歌手シュワルツコップによる、本人の二重唱。CDケースにある(購入前に確認の出来る)宣伝文句には、「オリジナル・テープからの、初めてのリマスタリングによるCD化」と云った文句が並んでいますが、シュワルツコップ自身による二重唱の文言は何処にも書かれていないのでありますね。

個人的にはこれはこのアルバムの最大の売り物だと思うのですが、製作者側にとってはどうでも良かったのか、或いはそうした扇情的な売り込みは、クリスマス・ソング集に相応しくない、と考えたのか。
本当の所は無論解りませんが、気楽に聴くと云うより、どちらかと云うとそれこそ正座して恭しく聴かないといけない様な気にもなる歌唱ではありますが、年末の一時、敬虔な気になってシュワルツコップの歌に耳を傾けるのもまた一興かもしれません。

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