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2014年11月24日22:43

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岩波文庫旧版「源氏物語」の最終巻

敗戦後、シベリアに抑留された藤村潔が、岩波文庫の『源氏物語』を心の支えとしたことについては、前に日記で紹介したことがある。

■シベリアの「源氏物語」
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1931304343&owner_id=2312860

その元となった朝日新聞の記事には「宇治十帖を収めた1冊」と書かれていた。
ちょっと疑問に思ったのは、戦中の岩波文庫の『源氏物語』においては、宇治十帖は1冊に収まっていたのかどうかということだ。この十帖は分量も多く、文庫本1冊に収めるとしたら相当の厚さになるはずだった。

現在、岩波文庫版で出ている『源氏物語』は山岸徳平の校注によるものだが、これの最終巻(第6巻)は、昭和42年(1967年)11月16日に発行されている。(ちなみに、この新版の第6巻には、「東屋」以降の5帖しか載っていない。)
つまり、藤村がシベリアで愛読した『源氏物語』は戦前のもの、昭和9年(1934年)4月25日に発行された島津久基の校訂によるものであったはずだ。

たまたま先日、町田市にある高原書店に行ったら、この旧岩波文庫版の最終巻(第5巻)があった。見ると「総角」の帖から収録されていた。つまり「十帖」の全てではなく、最後の8帖が載っていたのだ。「宇治十帖(の全て)を収めた1冊」ではなかった。

この第5巻(昭和34年5月30日 第19刷)は108円だったので、買ってしまった。

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この旧岩波文庫版は、神田神保町でも見つかった。
それぞれの奥付には、以下のように書かれている。
 
昭和14年4月1日 第6刷 定価40銭
昭和26年3月30日 第11刷 定価90円
昭和26年9月20日 第13刷 定価120円
昭和34年5月30日 第19刷 定価120円

敗戦(昭和20年=1945年)をはさんだ8年間で、価格が200倍以上になっていることが分かる。
また、昭和26年には、半年の間で値上げされていることも分かる。逆に、その後の8年間では、定価に変動が無い。

昔の岩波文庫の値段は「星」で決められていたことを思い出した。そのことについて調べてみたら、当の岩波書店のホーム・ページに「文庫豆知識」として掲載されていた。以下に引用する。

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■文庫豆知識
http://www.iwanami.co.jp/hensyu/bun/mametisiki.html
「創刊当時,岩波文庫の定価は,約100ページを黒星★1つとし,★1つについて20銭でした.」
「星★ひとつ20銭の定価は創刊以来1943年いっぱいまで維持されました.」
「1944年から戦後の5,6年はインフレーションの進行のすさまじさを反映して岩波文庫の定価もめまぐるしくあがっています.何とか以前のような統一定価を定めることができたのが1950年で,★1つ30円.」
「以下,★1つについての定価の改定を追ってみると,
1951年 40円
1962年 50円
1973年 70円
1975年 ☆星1つ100円(在庫品は★1つ70円のまま)
1979年 ☆星1つ100円と★星1つ50円の併用,つまり50円刻みになる」
「1981年4月の新刊から星で定価を表示する方式をやめ金額による表示になりました.」

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年号を西暦に直して、定価と星の数の関係を示すと次のようになるようだ。

1939年4月1日  第6刷  定価40銭(20銭×星2)
1951年3月30日 第11刷 定価90円(30円×星3)
1951年9月20日 第13刷 定価120円(40円×星3)
1959年5月30日 第19刷 定価120円(40円×星3)

以上、メモとして。

■源氏物語に関する日記の目次
http://mixi.jp/view_diary.pl?owner_id=2312860&id=1859548426

■日本古典文学に関する日記の目次
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1878532589&owner_id=2312860
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