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2010年07月12日00:02

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夜間飛行(02)

「歴史街道」の増刊である(月刊)「コミック大河」に連載されている滝沢聖峰の「東京物語」。

第6回のサブタイトルが奇しくも「夜間飛行」。

主人公は、陸軍審査部の白河知之大尉。米軍による夜間爆撃に対抗するため、夜間戦闘機に搭載するレーダー(電波評定機)の試験運用に従事する。夜間飛行は、もはや未知の領域へのパイロットの挑戦ではなく、祖国の都市と住民を護るための必死の努力となる。実用に耐えない機材で、本当に本土防空は果たせるのか、審査部員たちの不安は募る。

妻の万里子は、不規則な勤務の続く夫の帰宅を待ち続ける。秘密のヴェールに包まれた夫の仕事について思いを馳せていたとき、父親からサン=テグジュペリの『夜間飛行』が送られてくる。
<第一書房版『夜間飛行』>
http://blog.takizawaseiho.com/images/yakanhikou.jpg
フォト



『夜間飛行』の一節、

「彼女の思ひは
夫が空を征服する為に
見捨てなければならない
地上の多くのものの
上にあった」

を読みながら、万里子は夫の気持ちを想う。

折りしも、陸軍は航空部隊による「特攻」の準備を始める。
審査部は反対するが、特攻へと向かう流れを止めることは出来なかった。

帰宅し縁側で佇んでいる夫の肩に、万里子は手をのせる。

第六話は、やはりサン=デグジュペリの『夜間飛行』からの一節の引用で終わる。

「彼女は夫の肩に手をのせた
そして肌の微温を感じて
さびしい気持ちになった
この貴重な肉骨が
危険にさらされているとは
なんと悲しいことだ……」

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しばらく大戦モノは「書けない」と言っていた滝沢が、なかなか味のある秀作を連載しています。
もともと、彼もサン=テグジュペリの大ファンですが、『夜間飛行』と本土防空戦を絡めるとは、なかなかのアイディアです。戦前刊行の堀口大學訳の現物を用意して劇画の中で登場させるなど、あいかわらずの凝りようです。

「敗戦」というピリオドに向けて、夫婦にどのような運命が待っているのか、見守りたいと思います。

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「いま、息をしている言葉で」の光文社古典新訳文庫から、『夜間飛行』の新訳が出ました。
訳者は二木麻里さん。
まだ、冒頭しか読んでいませんが、読みやすそうな訳です。
堀口訳は不朽の名訳だと思いますが、こういう新訳が出ることも歓迎したいです。

『人間の土地』はもちろん、『戦う操縦士』あたりも新訳が欲しいところです。

新訳『夜間飛行』については、またいずれ。

<夜間飛行>
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<サンテグジュペリに関する日記>
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