「人間であるということは、とりもなおさず責任をもつことだ。人間であるということは、自分には関係がないと思われるような不幸な出来事に対して忸怩たることだ。人間であるということは、自分の僚友が勝ち得た勝利を誇りとすることだ。人間であるということは、自分の石をそこに据えながら、世界の建設に加担していると感じることだ。」
「世人はよくこの種の人間を、闘牛士や賭博者と混同したがったりする。世人は彼らが死を軽んずる点を吹聴する。だが、ぼくは死を軽んずることをたいしたことだとは思わない。その死がもし、自ら引き受けた責任の観念に深く根ざしていないかぎり、それは単に貧弱さの表れ、若気のいたりにしかすぎない。」
サン=テグジュペリ『人間の土地』（堀口大學訳・新潮文庫版）ｐ．５７より
.:*:'゜☆。.:*:・'゜★゜'・:*:.。.:*:・'゜☆。'・.:*:・.:*:・'゜★゜'・:*:.。.:*:・
「人間は、自由であるように呪われているのであるから、全世界の重みを自己の双肩に担っている。人間は、世界についても、自己自身についても、存在のしかたに関するかぎり、その責任者である。われわれは『責任』という語を、『或る出来事もしくは或る対象の、あらそう余地のない作者である（ことについての）意識』という一般に用いられている意味に解する。」
Ｊ．Ｐ．サルトル『存在と無』第４部・第１章−�供崋�由と責任」（松浪信三郎訳）より
.:*:'゜☆。.:*:・'゜★゜'・:*:.。.:*:・'゜☆。'・.:*:・.:*:・'゜★゜'・:*:.。.:*:・
サン=テグジュペリは、１９００年６月生まれ。サルトルは１９０５年６月生まれで、少し若い。ちなみに、僕の祖父が１９００年、昭和天皇が１９０１年、イラン革命のホメイニ師が１９０２年の生まれで、ほぼ同時代人ということになる。
ご存知にように、サン=テグジュペリは、１９４４年、作戦飛行中に死に、サルトルは「戦後」を生きる。
もし、サン=テグジュペリがサルトルとともに戦後を生きたら、どうなっていただろうか？
革新的なサルトルの人気は、１９６０年代に最高潮に達した。
サン=テグジュペリはどうだろうか。正直に言って、「戦後」の彼のイメージは、あまりパッとしない。保守的なのに派手好きの彼、ジェット機の時代に至ってもまだプロペラ機（の時代）に郷愁を抱く彼は、時代のメイン・ストリームに乗るようなことは出来なかっただろう。中途半端に政治的で、時代遅れのロマンティシズムに溺れ、独善的で観念的な物語を構想する。
あるいは、『星の王子さま』の作者らしからぬスキャンダルに塗れ、ゴシップ番組に話題を提供するような破目に陥っていたかも知れない。
想像で人を貶めるようなことを書くのは決して品のいいことではないと解かってはいるけれど、サン=テグジュペリについて言うならば、彼の実り多き「戦後」というものを、あまりうまく想い浮かべることが出来ないでいる。
.:*:'゜☆。.:*:・'゜★゜'・:*:.。.:*:・'゜☆。'・.:*:・.:*:・'゜★゜'・:*:.。.:*:・
同時代人だからというわけではないが、サン=テグジュペリとサルトルの思想の中には、近いところもある。
上に引用した「責任」に関する一節は、両者の共通点を示しているように思われる。
しかし、「死」というものに対する態度には、二人には大きな開きがある。
その違いが、二人の人生の長さの違いにも反映されているような気がしている。
＜サン=テグジュペリと『星の王子さま』関係の目次＞
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=233093359&owner_id=2312860
ログインしてコメントを確認・投稿する