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2018年11月29日23:55

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展覧会之雑談帖(その3)―土方重巳の展覧会

わたくしが御幼少の砌(と言うほどの事もなく、要は幼稚園前〜小学校低学年の頃)某国営放送での人形劇は「ブーフーウー」でありました。餓鬼の頃だった時分には、製作者側の工夫もあって毎回お姉さんが箱から取り出すブーフーウーの人形は、主題歌と共に生き生きと動き出すのが不思議だったものです。

さて、そのブーフーウーにもキャラクター・デザインを担当された方がおられて、その作品展が催される、との事。担当された方のご息女が、その辺りの所について某日本経済新聞の文化欄に書いておられたので、御紹介。

<引用開始>

父のキャラ 衰えぬ輝き  土方重巳「サトちゃん」や「ブーフーウー」で作品展 篠崎旗江


かつてNHKでは劇作家の飯沢匡(ただす)さんが手掛ける人形劇シリーズを放送していた。中でも「三匹の子ぶた」を題材に、1960年に始まった着ぐるみ人形劇「ブーフーウー」は子どもたちの心を瞬く間につかみ、7年間続く人気作品となった。そのキャラクターをデザインしたのが、私の父のグラフィックデザイナー、土方重巳(1915〜86年)だ。父はその後も「ダットくん」「とんちんこぼうず」といった人形劇のほか、佐藤製薬の「サトちゃん」などの人気キャラクターを手掛け、劇場ポスターのデザインやCMなど幅広く活動した。昭和期のキャラクターデザインの先駆者的な存在だったが、あまり世に知られることがないまま亡くなってしまう。私は父が残した作品の整理や収集にあたってきた。

父は多摩帝国美術学校(現多摩美術大学)を卒業後、東宝で映画などのポスターや、チラシのデザインを担当していた。戦時色が濃くなった40年ごろのことだ。いわゆる戦意高揚のための映画なども多く、関連した仕事があったようだ。

◆自分もモデル代わり
私は49年生まれ。当時は戦後一気に発刊した雑誌のデザインなどが多かった。渋谷区の中学・高校に通っていたが、原宿に近い父の事務所をよく訪ねていった。いつも優しくしてくれ、女子児童向け雑誌の仕事をしていた時は、私がモデル代わりにいろいろな動きをしながらポーズをとった。ブーフーウーが放送されていたころは小学校高学年から中学生だったので、はっきり覚えている。それまでも「サラリーマンのような仕事とは違う」と感じていたが、この人形劇で、グラフィックデザイナーという父の仕事が心にはっきり焼き付いた。

絵を教えてもらう機会はほとんどなかった。大きな声では言えないが、鮮明に覚えているのが、中学生のころ一度絵の課題を手伝ってもらったことがある。その絵の採点がものすごく低かった。先生が中学生に求めるような描き方ではなかったのだろう。学校を卒業して働くようになってからも親子の仲は良く、私が勤める出版社によく電話がかかってきた。

◆突然の病気で亡くなる
そんな父が86年1月、病気で亡くなる。たぶん自分の余命がどのくらいか知らなかったはずだ。まずは仕事場や横浜市の自宅を整理する必要があり、仕事場のものは全て自宅の父の部屋に移動した。しかし残された資料は膨大で、自宅の一室が丸々倉庫のようになっていた。あまりに資料が多いため、母も私もどれを残して、どれを処分すべきか判断できない。とりあえず「造形の世界」という作品集で使った資料を中心に、約500作品のリストを作成。そのほかは手つかずのまま、しばらく放置していた。

「開かずの間」に再び足を踏み入れたのは2015年。父が手掛けた作品の所在を尋ねる連絡が入ったからだ。作品を探すため、久しぶりに資料を整理すると戦前の貴重な映画や演劇、オペラ、バレエのポスターやチケット、CMキャラクターなどの原画が大量に見つかった。商業デザインの分野は美術品と違って原画が散逸しがちで、残っているものは極めて少ない。だが父は自分で作品を整理し、古新聞などにくるんで保管していた。その几帳面(きちょうめん)さと仕事の幅広さを初めて目の当たりにし、驚いた。

◆残した作品5000点
これを機会にすべての作品を整理してみたら、5000点近くあった。中でも、53年に岩波書店が刊行した絵本「ねずみとおうさま」は貴重な原画が残っていた。ブーフーウーの原画も数十点見つかった。絵を眺めているうち、放送当時の様子が眼前に浮かんできた。こうした作品を是非皆さんに見てほしいと願っていたところ、父の出生地である神戸市に近い大谷記念美術館(兵庫県西宮市)が作品展を開いてくれることになった。約300点を展示し、12月9日まで開催中だ。19年4〜6月には刈谷市美術館(愛知県刈谷市)に巡回する。

父の仕事は裏方といえるもので、生前に華々しいスポットを浴びる機会はなかった。昭和のたたずまいを感じさせる多彩な仕事ぶりを一人でも多くの人に知ってもらえれば幸いだ。

<引用終了>

出典Web:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20181129&ng=DGKKZO38276540Y8A121C1BC8000

わたくしは、この方のお名前をこの記事を読むまで、全く知りませんでした。しかし、ブーフーウーの原画もある、となるとこれは是非展覧会を見に行きたい所。流石に関西・中京圏へそれだけの為に足を運ぶのは、財政的にも難しいので、首都圏でも開催してくれないものか、と切に願う所でありますね。


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