『
マイケル・ムーアの世界侵略のススメ』
アポなし突撃取材で知られるマイケル・ムーアだが、今回は世界を旅して米国にない良いところを盗んでしまおうというドキュメンタリー。
比較対象の諸外国を<他山の石>として米国批判を描き出したいのだろうから、米国人の気持ちや立場になって鑑賞するのが一番だと思う。
イタリア、ドイツ、フランスなどを駆け回るが、そもそも米国防総省の依頼で事前アポを取ってその国の美点を取り上げるのだから生ぬるくも感じる。
米国の事情と単純比較はできないだろうが、聞けば聞くほど(一方では米国の美点もあるのだろうが)厳しい米国の環境も感じてしまう。
イタリアで米国の実情を教えられた時の男性の表情が何とも言えない。(笑)
ノルウェーの刑務所ネタは想像つかないレベルで唖然とした。
軟派な題材から入るが、次第に硬派になるあたりはムーア節を感じる。
着眼点はまずまず面白いけれど、安全なところにしか取材をしてない点で緊迫度が足りなくなっているのが残念。(『ボウリング・フォー・コロンバイン』でのチャールトン・ヘストンへのインタビューのようなシーンが欲しかった。)
シンボリックなベルリンの壁は効果的。
リアリティ番組ばかり見てないで、リアルな世界を見るべきだという話は米国に限ったことでもないだろう。
各国の“良いところどり”のオチは実に皮肉が感じられる。
米国人観客のリアクションが見てみたかった。
しかし、今回は正直言って羨ましい旅に思えた。同行したい!
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